民法第397条・物権
民法第397条:抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅
債務者・抵当権設定者でない者が取得時効の要件を備える占有をすると、抵当権は消滅します。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
誰かが抵当不動産抵当不動産抵当権の目的である不動産のこと。民法370条が条文中でこの語を定義しています。用語ページを見る →を長く占有占有物を事実上支配していること。所有の意思をもって平穏かつ公然と他人の物を占有し続けると、取得時効が成立し得ます(民法162条)。用語ページを見る →して取得時効取得時効一定期間の占有や権利の行使によって、その権利を取得する時効のこと(民法162条・163条)。所有権なら20年、占有開始時に善意無過失なら10年です。用語ページを見る →したら、抵当権抵当権目的物の占有を移さずに設定できる担保物権(民法369条以下)。先取特権の効力については、その性質に反しない限り抵当権の規定が準用されます(民法341条)。用語ページを見る →はどうなるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
民法397条が答えておる。抵当権は、これによって消滅する——きっぱりしたものじゃ。ただし誰が占有したかで結論が変わるぞ。
条文の内容
債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
| 要素 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 誰が | 債務者又は抵当権設定者でない者 |
| 何をした | 抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をした |
| 効果 | 抵当権は、これによって消滅する |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
債務者や抵当権設定者が占有してもダメなんだね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
当然じゃな。自分が抵当権を付けた不動産を、自分が占有し続けて時効取得する——それでは担保が意味を失う。民法396条が債務者・抵当権設定者を名指しで扱っておったのと、同じ発想じゃ。
時効完成後に設定された抵当権と再度の時効
取得時効の完成後に第三者が抵当権の設定を受けた事案について、最高裁は次のように判断しました。
不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において,上記不動産の時効取得者である占有者が,その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し,その期間の経過後に取得時効を援用したときは,上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り,上記占有者が,上記不動産を時効取得する結果,上記抵当権は消滅する。 (最判平成24年3月16日・民集第66巻5号2321頁)
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
もう一度、占有を続ければいいんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨の条件をよう見よ。所有権移転登記がされることのないまま、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し、その期間の経過後に取得時効を援用したとき——そして抵当権の存在を容認していたなど特段の事情がない限りじゃ。
条件が幾重にも重なっておる。ひとつでも外れれば、この要旨の射程ではないのう。
登記を備えた時効取得者の場合
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
では、時効を援用して登記まで済ませた者が、その後に設定された抵当権に対して同じ主張をできるか。最高裁は否定しておる。
取得時効の援用により不動産の所有権を取得してその旨の登記を有する者は,当該取得時効の完成後に設定された抵当権に対抗するため,その設定登記時を起算点とする再度の取得時効の完成を主張し,援用をすることはできない。 (最判平成15年10月31日・集民第211号313頁)
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
平成24年の判決とは反対の結論だ!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
結論は違うが、事案が違うのじゃ。要旨の言葉を並べてみよ。
平成15年は「取得時効の援用により不動産の所有権を取得してその旨の登記を有する者」、平成24年は「所有権移転登記がされることのないまま」じゃ。登記を備えたかどうか——そこを要旨は書き分けておる。
第三節での位置
| 条文 | 消滅原因 |
|---|---|
| 民法396条 | 時効消滅(債務者・抵当権設定者には債権と同時でなければ消えない) |
| 民法397条 | 第三者の時効取得 |
| 民法398条 | 目的である地上権地上権他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する物権(民法265条)。同じ「借りて使う」でも、債権である賃借権とは性質が異なります。用語ページを見る →等の放棄 |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
396条は抵当権自体の時効、397条は他人の時効取得の反射じゃ。似た言葉が並ぶが、動いておるものが違う——そこを取り違えぬようにな。
資格別の演習
債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法397条がそのとおり定めています。
債務者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときも、民法397条により抵当権は消滅する。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法397条は「債務者又は抵当権設定者でない者」が占有をした場合について定めています。
取得時効の援用により不動産の所有権を取得してその旨の登記を有する者は、当該取得時効の完成後に設定された抵当権に対抗するため、その設定登記時を起算点とする再度の取得時効の完成を主張し、援用をすることはできない。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。最判平成15年10月31日(集民第211号313頁)の裁判要旨がそのとおり判示しています。
一次情報を確認する
- e-Gov法令検索:民法第397条
- 最判平成24年3月16日(民集 第66巻5号2321頁)(平成22(受)336)
- 最判平成15年10月31日(集民 第211号313頁)(平成12(受)1589)