民法第557条・債権
民法第557条:手付
買主は手付を放棄し売主は倍額を現実に提供して解除できますが、相手方が履行に着手した後はできません。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
手付って、契約したしるしのお金だよね。あれって返ってくるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
民法557条を見よ。 手付手付契約締結の際に買主から売主へ交付される金銭のこと。民法557条1項は、これを放棄しまたは倍額を現実に提供して解除できる解約手付と扱っています。用語ページを見る →を放棄すれば買主は抜けられる——逆に売主は倍額じゃ。 解約手付解約手付買主は手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供することで契約を解除できる、という機能を持つ手付のこと(民法557条1項)。用語ページを見る →と呼ばれる働きじゃな。
条文
1 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
2 第五百四十五条第四項の規定は、前項の場合には、適用しない。
| 誰が | 何をして | 効果 |
|---|---|---|
| 買主 | その手付を放棄 | 契約の解除をすることができる |
| 売主 | その倍額を現実に提供 | 契約の解除をすることができる |
| ただし書 | その相手方が契約の履行に着手した後 | 解除できない |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
売主のほうは「現実に提供」なんだね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文がそう限っておる。 口頭の提供口頭の提供債権者があらかじめ受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときに、弁済の準備をしたことを通知して受領の催告をすること(民法493条ただし書)。用語ページを見る →では足りぬ——倍額を現に差し出せ、ということじゃな。
そして2項じゃ。 民法545条4項——解除権の行使は損害賠償の請求を妨げない——を適用しない。
手付による解除は「手付の分で清算する」仕組みじゃからのう。その上に賠償まで求めさせぬ、と読める。
判例①——「相手方が」履行に着手した後
最大判昭和40年11月24日(民集第19巻8号2019頁/昭和37(オ)760)は、 解約手付の授受された売買契約において、当事者の一方は、自ら履行に着手した場合でも、 相手方が履行に着手するまでは、民法557条1項に定める解除権を行使することができる と判断しました。また同判決は、 売主が第三者所有の不動産を買主に譲渡する前提としてその不動産の所有権を取得し、 かつ自己名義の所有権取得登記を得た場合は、「契約の履行に着手」したときにあたる としています。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
自分が着手してても、相手が着手してなければ解除できるんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文が「その相手方が契約の履行に着手した後は」と書いておることと、きれいに揃う判断じゃな。
判例②③——「履行の着手履行の着手客観的に外部から認識できる形で履行行為の一部をすること。相手方が履行に着手した後は手付による解除ができなくなります(民法557条1項ただし書)。用語ページを見る →」の当たり外れ
最判昭和33年6月5日(民集第12巻9号1359頁/昭和30(オ)995)は、 土地の買主が約定の履行期後に売主に対してしばしば履行を求め、 かつ売主が所有権移転登記手続をすればいつでも支払えるよう残代金を準備していたときは、 民法557条にいう「契約の履行に著手」したものと認めるのが相当であるとしました。
これに対して最判平成5年3月16日(民集第47巻4号3005頁/平成1(オ)1004)は、 土地及び建物の買主が履行期前に土地の測量をし、残代金を準備して口頭の提供をしたうえで履行の催告をしても、 売主が移転先を確保するため履行期が約1年9か月先に定められ、 その測量及び催告が履行期までになお相当の期間がある時点でされたなど判示の事実関係の下では、 履行の着手に当たらないとしました。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
結論が分かれた二つを並べたぞ。 履行期の前か後か、残された期間はどれほどか——要旨に現れておるのはそこじゃ。
「こうすれば必ず着手」という物差しは、要旨には書かれておらぬ。 事案の事情の下での判断と読むのじゃ。
資格別の演習
買主が売主に手付を交付したときは、売主はその倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。
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解答:◯
正しい記述です。民法557条1項本文がそのとおり定めています。
売主が手付による解除をするには、手付の倍額を償還する旨を口頭で告げれば足りる。
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解答:×
誤りです。民法557条1項本文は「その倍額を現実に提供して」と定めています。
解約手付が授受された売買契約において、当事者の一方は自ら履行に着手した場合でも、相手方が履行に着手するまでは手付による解除をすることができる。
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解答:◯
正しい記述です。最大判昭和40年11月24日がそのとおり判断しています。
手付による解除をした当事者は、民法545条4項により相手方に対し損害賠償を請求することができる。
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解答:×
誤りです。民法557条2項は、民法545条4項の規定を手付による解除の場合には適用しないと定めています。