民法第371条・物権
民法第371条:抵当権の効力と果実
不履行があった後に生じた果実にだけ及びます。それまでは所有者が賃料を受け取ってよい——占有を移さない担保らしい線引きです。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
抵当権抵当権目的物の占有を移さずに設定できる担保物権(民法369条以下)。先取特権の効力については、その性質に反しない限り抵当権の規定が準用されます(民法341条)。用語ページを見る →を設定したアパート。家賃は誰のもの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
民法371条じゃ。不履行があるまでは所有者のもの。抵当権が及ぶのは、その後に生じた果実果実物から生じる収益のこと。作物などの天然果実と、賃料などの法定果実があります(民法88条)。善意の占有者はこれを取得できます(民法189条1項)。用語ページを見る →じゃ。
条文の内容
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
| 要素 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 条件 | その担保する債権について不履行があったとき |
| 範囲 | その後に生じた抵当不動産抵当不動産抵当権の目的である不動産のこと。民法370条が条文中でこの語を定義しています。用語ページを見る →の果実 |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「その後に生じた」。不履行の前の家賃は関係ないんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこが線引きじゃ。抵当権抵当権目的物の占有を移さずに設定できる担保物権(民法369条以下)。先取特権の効力については、その性質に反しない限り抵当権の規定が準用されます(民法341条)。用語ページを見る →は占有を移さぬ担保じゃからのう(民法369条1項)。きちんと払っておる間は、所有者が自由に使い、収益も取ってよい。
ところが不履行があれば話は別じゃ。担保の実現に向けて、果実まで押さえられるようになる。
質権と比べてみよ。不動産質権者は、はじめから使用収益できる(民法356条)。抵当権は不履行を待ってから——ここが二つの担保の性格の違いじゃな。
物上代位との関係
賃料債権については、民法372条により準用される民法304条の物上代位物上代位担保の目的物が売却・賃貸・滅失・損傷したときに、債務者が受けるべき金銭などに対して権利を行使すること(民法304条1項)。払渡し又は引渡しの前に差押えが必要です。用語ページを見る →も問題になります。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
最判平成14年3月28日(民集第56巻3号689頁)は、賃料債権に物上代位物上代位担保の目的物が売却・賃貸・滅失・損傷したときに、債務者が受けるべき金銭などに対して権利を行使すること(民法304条1項)。払渡し又は引渡しの前に差押えが必要です。用語ページを見る →して差し押さえた場合でも、賃貸借契約が終了し目的物が明け渡されたときは敷金の充当により賃料債権が消滅するとしておった。
そして最判令和5年11月27日(民集第77巻8号2188頁)の裁判要旨は、次のとおりじゃ。
抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前に、賃貸人との間で、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と上記の差押えがされた後の期間に対応する賃料債権とを直ちに対当額で相殺する旨の合意をしたとしても、当該合意の効力を抵当権者に対抗することはできない。
賃料をめぐる攻防は、371条と304条の両方が舞台になるのじゃな。
判例:担保不動産収益執行と収益の帰属
最判平成21年7月3日(民集第63巻6号1047頁)
裁判要旨は次のとおりです。
1 担保不動産収益執行の管理人は担保不動産の収益に係る給付を求める権利を行使する権限を取得するにとどまり,同権利自体は,担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後に弁済期の到来するものであっても,所有者に帰属する。 2 抵当不動産の賃借人は,担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後においても,抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権を自働債権とし賃料債権を受働債権とする相殺をもって管理人に対抗することができる。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
管理人は「行使する権限を取得するにとどまり」、権利そのものは所有者のものなんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨の一がそう述べておる。参照法条に民法371条が挙がっておるとおりじゃ。抵当権が果実に及ぶといっても、収益に係る権利そのものが抵当権者に移るわけではない、と読める。
資格別の演習
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
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解答:◯
正しい記述です。民法371条がそのとおり定めています。
抵当権の効力は、抵当権設定の時から抵当不動産の果実に及ぶ。
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解答:×
誤りです。民法371条は「その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた」果実に及ぶとしています。
判例によれば、担保不動産収益執行の管理人は担保不動産の収益に係る給付を求める権利を行使する権限を取得するにとどまり、同権利自体は所有者に帰属する。
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解答:◯
正しい記述です。最判平成21年7月3日(民集第63巻6号1047頁)の裁判要旨一がそのとおり述べています。