民法第206条・物権
民法第206条:所有権の内容
所有者は、法令の制限内において自由に使用・収益・処分ができます。物権のなかで最も強い権利を定めた条文と、その「法令の制限内」という枠を読みます。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
ここから第三章「所有権」だね! 自分の土地なら、何をしてもいいんでしょ?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
威勢がよいのう。じゃが民法206条をよう読むのじゃ。**「法令の制限内において」**という一句が、頭に置かれておる。
条文の内容
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
| 要素 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 枠 | 法令の制限内において |
| 態様 | 自由に |
| 内容 | ① 使用 ② 収益 ③ 処分 |
所有権所有権法令の制限内において、自由にその所有物の使用・収益・処分をする権利(民法206条)。物権のなかで最も全面的な支配権です。用語ページを見る →の中身を、条文はこの3つの言葉で示しています。
| 内容 | 意味 |
|---|---|
| 使用 | 物をそのまま使うこと(住む、乗る) |
| 収益 | 物から果実果実物から生じる収益のこと。作物などの天然果実と、賃料などの法定果実があります(民法88条)。善意の占有者はこれを取得できます(民法189条1項)。用語ページを見る →を得ること(貸して賃料を得る) |
| 処分 | 物を売る、壊す、担保に入れる |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
地上権とか賃借権は「使用」だけだったりするよね。所有権は全部そろってるんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこが所有権の強さじゃ。他の物権物権物を直接に支配する権利のこと。特定の人に対して請求する債権と違い、誰に対しても主張できるのが特徴です。民法第二編が定めます。用語ページを見る →は、この3つの一部を切り出したものと見ることもできる。じゃから民法179条の混同混同同一物について所有権と他の物権が同一人に帰属したときに、その他の物権が消滅すること(民法179条1項)。自分の物に自分の制限物権を残しておく意味がないためです。用語ページを見る →で、所有権と重なった他の物権が消えるのじゃな。すでに全部持っておる者に、部分を重ねる意味がない。
「法令の制限内において」
条文は自由を認める前に、枠を置いています。民法自身も、次条以下で制限を用意しています。
| 制限 | 条文 |
|---|---|
| 土地所有権の範囲 | 民法207条 |
| 相隣関係相隣関係隣り合う土地の所有者どうしの利害を調整する民法209条〜238条のルール。所有権を互いに少しずつ制限し、また少しずつ広げます。用語ページを見る → | 民法209条〜238条 |
| 権利の濫用の禁止 | 民法1条3項 |
判例
最判平成6年2月8日(民集第48巻2号373頁)
判示事項は「甲所有地上の建物所有者乙がこれを丙に譲渡した後もなお登記名義を保有する場合における建物収去・土地明渡義務者」です。裁判要旨は次のとおりです。
甲所有地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由した乙は、たとい右建物を丙に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、甲に対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
もう売ったのに、名義が残っていると義務も残るんだ……。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨は「自らの意思に基づいてその旨の登記を経由した」乙について、そう述べておる。参照法条には民法177条・200条・206条が並んでおるのう。土地所有者から見れば、登記名義人こそが相手じゃ、という筋道じゃな。
最判平成21年3月10日(民集第63巻3号385頁)
判示事項は、動産の購入代金を立替払し立替金債務の担保として所有権を留保した者が、第三者の土地上でその土地所有権の行使を妨害している動産について、撤去義務や不法行為責任を免れるかどうかです。
裁判要旨は、契約上、残債務全額の弁済期の到来前は動産を占有・使用する権原を有せず、経過後は引渡しを受けて売却し代金を残債務の弁済に充当できるとされているときは、弁済期が到来するまでは特段の事情がない限り撤去義務や不法行為責任を負わないが、弁済期が経過した後は、留保された所有権が担保権の性質を有するからといって撤去義務や不法行為責任を免れることはない、としています。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
土地の所有者の側から見れば、民法206条の「自由に使用、収益及び処分をする権利」が妨げられておる場面じゃ。弁済期という一線で結論が分かれておる——要旨の言葉を丁寧に追うのじゃぞ。
資格別の演習
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
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解答:◯
正しい記述です。民法206条がそのとおり定めています。「法令の制限内において」という枠が先に置かれている点にも注意しましょう。
民法206条は、所有者が何らの制限も受けずに所有物を使用・収益・処分できることを定めている。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。条文は「法令の制限内において」と明記しています。民法自身も相隣関係(民法209条以下)などの制限を置いています。
判例によれば、他人の土地上の建物を取得し自らの意思に基づいて登記を経由した者は、その建物を第三者に譲渡しても、登記名義を保有する限り、土地所有者に対し建物収去・土地明渡しの義務を免れない。
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解答:◯
正しい記述です。最判平成6年2月8日(民集第48巻2号373頁)の裁判要旨がそのとおり述べています。