刑法第156条・文書偽造の罪
刑法第156条:虚偽公文書作成等
公務員が職務に関し、行使の目的で虚偽の文書を作成する罪です。名義を偽らずに内容を偽る「無形偽造」を、公文書について正面から処罰します。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
権限のある人が、うそを書いた場合だね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そのとおり。155条が誰が作ったかを偽る罪なら、156条は何を書いたかを偽る罪じゃ。この対比が第十七章の背骨になっておる。
条文の内容
公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書等若しくは電磁的記録文書等を作成し、又は文書等若しくは電磁的記録文書等を変造したときは、印章等又は電磁的記録印章等の有無により区別して、前二条の例による。
要件を分解する
| 要件 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 主体 | 公務員(刑法上の)公務員(刑法上の)刑法7条1項が定める、国または地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員・委員その他の職員のこと。「公務に従事する」ことが決め手で、役所に勤めているかどうかではありません。用語ページを見る → |
| 場面 | その職務に関し |
| 目的 | 行使の目的行使の目的作り出した物を真正なものとして用いる目的。刑法148条・154条・155条・159条・162条・164条以下は、いずれも「行使の目的で」を要件としています。用語ページを見る → |
| 行為 | 虚偽の文書等・電磁的記録文書等を作成し、または変造した |
| 刑 | 印章等の有無により区別して、前二条の例による |
「前二条の例による」
156条は自前の法定刑を持ちません。154条・155条の枠組みを借ります。
| 印章等の有無 | 借りる条文 | 刑 |
|---|---|---|
| 御璽・国璽・御名を使用 | 154条 | 無期または3年以上の拘禁刑 |
| 印章等あり | 155条1項・2項 | 1年以上10年以下の拘禁刑 |
| 印章等なし | 155条3項 | 3年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金 |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
ここでも「有印」「無印」で分かれるんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文が「印章等又は電磁的記録印章等の有無により区別して」とわざわざ書いておるからのう。155条の分かれ目が、そのまま156条にも持ち込まれるわけじゃ。
155条との対比
| 条文 | 主体 | 偽るもの | 呼び名 |
|---|---|---|---|
| 刑法155条 | 制限なし | 名義(誰が作ったか) | 有形偽造有形偽造作成権限のない者が他人の名義を使って文書を作り出すこと。刑法155条(公文書偽造)・159条(私文書偽造)が処罰の対象とする類型です。用語ページを見る → |
| 刑法156条 | 公務員 | 内容(何を書いたか) | 無形偽造無形偽造作成権限のある者が、内容の虚偽な文書を作ること。刑法156条(虚偽公文書作成)が公文書について、160条(虚偽診断書等作成)が限られた私文書について処罰します。用語ページを見る → |
虚偽公文書作成虚偽公文書作成公務員がその職務に関し、行使の目的で虚偽の文書等を作成し、または変造すること(刑法156条)。印章等の有無により区別して、154条・155条の例によります。用語ページを見る →罪は、公務員という身分を持つ者だけが主体になれる身分犯身分犯犯人の一定の身分が、犯罪の成立や刑の軽重にかかわる犯罪のこと。刑法65条1項は身分のない者も共犯となるとし、2項は身分により刑に軽重があるときは身分のない者に通常の刑を科すとしています。用語ページを見る →です。
私文書との違い
私文書については、無形偽造を一般的に処罰する条文がありません。刑法160条(虚偽診断書等作成)が、医師の作成する限られた文書についてのみ定めています。
| 有形偽造 | 無形偽造 | |
|---|---|---|
| 公文書 | 155条 | 156条(一般的に処罰) |
| 私文書 | 159条 | 160条(医師の診断書等に限る) |
資格別の演習
公務員が、その職務に関し、行使の目的で虚偽の公文書を作成したときは、印章等の有無により区別して、刑法154条・155条の例により処断される。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。刑法156条は自前の法定刑を持たず、「前二条の例による」としています。
虚偽公文書作成罪の主体は公務員に限られる。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。刑法156条は「公務員が、その職務に関し」と主体を明示しています。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
では、公務員でない者が公文書にうそを書かせるには? その受け皿が次の157条じゃ。