刑法第155条・文書偽造の罪
刑法第155条:公文書偽造等
公務所・公務員の作成すべき文書を偽造・変造する罪です。印章等の有無で刑が分かれ、写真コピーや作成権限をめぐる判例が蓄積しています。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
条文が長い……号まであるし、カッコ書きの定義がぎっしり。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
焦らずともよい。カッコ書きは定義じゃ。定義を先に取り出してしまえば、残る本体は154条と同じ形をしておる。
まず定義を取り出す
刑法155条1項は、第十七章で使う言葉を条文自身が定義しています。
| 語 | 定義(条文の言葉) | 定義の場所 |
|---|---|---|
| 印章等印章等刑法155条1項1号が定義する語で、印章または署名をいいます。第17章、165条および167条で共通して用いられます。用語ページを見る → | 公務所もしくは公務員の印章もしくは署名 | 1項1号 |
| 文書等文書等刑法155条1項1号が定義する語で、文書または図画をいいます。同章では、文書として表示されて行使される電磁的記録を「電磁的記録文書等」として別に定義しています。用語ページを見る → | 文書もしくは図画 | 1項1号 |
| 電磁的記録印章等電磁的記録印章等刑法155条1項2号が定義する語で、印章等として表示されることとなる電磁的記録をいいます。押印・署名のデジタル版を条文に取り込んだものです。用語ページを見る → | 印章等として表示されることとなる電磁的記録 | 1項2号 |
| 電磁的記録文書等 | 文書等として表示されて行使されることとなる電磁的記録 | 1項2号 |
「印章等」の定義は、この章のほか165条・167条でも使われます。
条文の内容
| 項 | 内容 | 刑 |
|---|---|---|
| 1項 | 行使の目的で、次の各号のいずれかの行為をした者 | 1年以上10年以下の拘禁刑 |
| 1項1号 | 印章等を使用して文書等を偽造、または偽造した印章等を使用して文書等を偽造する行為 | |
| 1項2号 | 電磁的記録印章等を使用して電磁的記録文書等を偽造、または偽造した電磁的記録印章等を使用して偽造する行為 | |
| 2項 | 公務所・公務員が押印し、もしくは署名した文書等、または電磁的記録印章等を使用して作成した電磁的記録文書等を変造した者 | 1項と同様 |
| 3項 | 前二項に規定するもののほか、公務所・公務員の作成すべき文書等・電磁的記録文書等を偽造し、または作成した文書等・電磁的記録文書等を変造した者 | 3年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金 |
1項・2項と3項の分かれ目
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
1項と3項、どっちも「偽造」なのに刑がぜんぜん違う。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
分かれ目は印章等(または電磁的記録印章等)を使ったかどうかじゃ。使えば1項・2項で1年以上10年以下、使わなければ3項で3年以下。俗にいう「有印」と「無印」の違いじゃな。
| 類型 | 印章等の使用 | 刑 |
|---|---|---|
| 1項・2項 | あり | 1年以上10年以下の拘禁刑 |
| 3項 | なし | 3年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金 |
判例——写真コピーの作成
最判昭和51年4月30日は、行使の目的をもって、虚偽の供託事実を記入した供託書用紙の下方に、真正な供託金受領証から切り取った供託官の記名印および公印押捺部分を接続させ、これを電子複写機で複写する方法により、あたかも供託官が職務上作成した真正な供託金受領証を原本として原形どおり正確に複写したかのような形式・外観を有する写真コピーを作成した所為は、刑法155条1項の公文書偽造罪にあたるとしました。
判例——作成権限があるとされた事例
最判昭和51年5月6日は、市長の代決者である課長を補助し、一定の手続に従って印鑑証明書の作成にあたっていた補助公務員が、その手続の要求する申請書の提出と手数料の納付をせずに、自己の用に供するため印鑑証明書を作成した行為は、判示の事情のもとにおいては、作成権限に基づくものとして公文書偽造罪を構成しないとしました。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
手続を守らなくても、権限があれば偽造にならないんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
有形偽造有形偽造作成権限のない者が他人の名義を使って文書を作り出すこと。刑法155条(公文書偽造)・159条(私文書偽造)が処罰の対象とする類型です。用語ページを見る →は「名義を偽ること」を捉える罪じゃからのう。権限のある者が作れば、名義は偽られておらぬ。内容が虚偽であれば、次の156条の出番になる。
資格別の演習
行使の目的で、公務員の印章を使用せずに公務所の作成すべき文書を偽造した者は、3年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金に処せられる。
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解答:◯
正しい記述です。刑法155条3項が、印章等を用いない場合を定めています。
真正な公文書の記名印・公印押捺部分を接続させて電子複写機で複写し、真正な原本を正確に複写したかのような外観の写真コピーを作成した行為につき、公文書偽造罪の成立が認められた事例がある。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。最判昭和51年4月30日の事案です。
印鑑証明書の作成にあたっていた補助公務員が、所定の手続を経ずに自己の用に供するため印鑑証明書を作成した行為につき、作成権限に基づくものとして公文書偽造罪の成立が否定された事例がある。
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解答:◯
正しい記述です。最判昭和51年5月6日の事案です。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
では、その「内容が虚偽」の場合——次の156条へ進もう。