民法第508条・債権
民法第508条:時効により消滅した債権を自働債権とする相殺
時効消滅した債権でも、消滅以前に相殺適状になっていた場合には相殺をすることができます。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
時効で消えちゃった債権は、もう相殺には使えないよね?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
使える場合がある。 民法508条じゃ。「その消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には」——この一句が扉を開けるぞ。
条文
時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。
| 要件 | 条文の言葉 |
|---|---|
| ① | 債権が**時効時効一定の事実状態が続いたことに法律上の効果を認める制度。権利を得る取得時効と、権利が消える消滅時効があり、効力は起算日にさかのぼります(民法144条)。用語ページを見る →によって消滅**した |
| ② | その消滅以前に相殺に適するようになっていた(相殺適状相殺適状二人が互いに同種の目的を有する債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるなど、相殺ができる状態にあること(民法505条1項)。用語ページを見る →にあった) |
| 効果 | その債権者は、相殺をすることができる |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
どうして消えた債権が使えるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
民法506条2項を思い出せ。 相殺の効力は相殺適状の時にさかのぼるのじゃったな。
相殺適状になった時点で、当事者は「もう差し引き済みだ」と思っておる。わざわざ請求もせず、そのまま時が過ぎる——それで時効にかかってしまうのじゃ。
その安心を裏切らぬ——それが民法508条の仕事じゃな。
「その消滅以前に」
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
時効で消えた後に相殺適状になった場合はだめなんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文がはっきり「その消滅以前に」と書いておる。 順序が命じゃ。
相殺適状 → 時効消滅なら使える。 時効消滅 → 相殺適状なら使えぬ。
すでに消えた債権に、後から出会っても遅い——そこに「差し引き済みという安心」は生じておらぬからのう。
請負の報酬債権との相殺
最高裁は、請負契約の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権について次のように判断しました。
注文者が民法六三七条所定の期間の経過した請負契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権とし請負人の報酬請求権を受働債権としてする相殺については、同法五〇八条の類推適用がある。 (最判昭和51年3月4日・民集第30巻2号48頁)
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
時効じゃなくて、期間の経過なんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
**だから「類推適用類推適用条文が直接あてはまらない場面でも、趣旨が同じだと考えられるときに、その条文を似た場面に及ぼして適用すること。条文の文言をそのまま使う「適用」とは区別されます。用語ページを見る →」**なのじゃ。民法508条がそのまま当てはまるのではなく、似た場面に引き伸ばす——要旨がその言葉を使っておる。
期間が経って行使できなくなった債権を自働債権自働債権相殺をする側が持っている債権のこと。「これで消してくれ」と差し出す側の債権です。用語ページを見る →とする——時効消滅した債権を使う場面と、確かによく似ておるのう。
なお、この裁判要旨が参照する民法637条や634条2項の条文内容は、平成29年改正で変わっておる。 要旨から確かに読み取れるのは、民法508条の類推適用という判断の枠組みじゃ。
資格別の演習
時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は相殺をすることができる。
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解答:◯
正しい記述です。民法508条がそのとおり定めています。
時効によって消滅した債権は、その消滅後に相殺適状となった場合であっても、これを自働債権として相殺をすることができる。
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解答:×
誤りです。民法508条は「その消滅以前に相殺に適するようになっていた場合」に限って相殺を認めています。
注文者が民法637条所定の期間の経過した請負契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権とし、請負人の報酬請求権を受働債権としてする相殺については、民法508条の類推適用がある。
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解答:◯
正しい記述です。最判昭和51年3月4日(民集第30巻2号48頁)の裁判要旨がそのとおり判示しています。
一次情報を確認する
- e-Gov法令検索:民法第508条
- 最判昭和51年3月4日(民集 第30巻2号48頁)(昭和50(オ)485)