民法第355条・物権
民法第355条:動産質権の順位
同じ動産に複数の質権があれば、設定の前後で順位が決まります。第二節「動産質」を締めくくる条文です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
同じ動産に、質権をいくつも設定できるの? 物はひとつしかないのに。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
民法355条が、その場合の順位を定めておる。設定の前後じゃ。
条文の内容
同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。
| 要素 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 場面 | 同一の動産について数個の質権が設定された |
| 基準 | 設定の前後による |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
素直な決め方だね。先に設定した人が勝ち。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そのとおり。民法331条2項が不動産売買の先取特権について「売買の前後による」としておったのと同じ型じゃな。
もっとも、質権は民法344条により引渡しがなければ効力を生じない。同じ物を二人に引き渡すことはできぬゆえ、実際にこの条文が働く場面は限られよう。民法348条の転質転質質権者が、その権利の存続期間内において自己の責任で質物をさらに質入れすること(民法348条)。これによって生じた損失は、不可抗力によるものであっても責任を負います。用語ページを見る →や、質物質物質権の目的として質権者に引き渡された物のこと。質権者は債権の弁済を受けるまでこれを留置できます(民法347条)。用語ページを見る →が第三者に預けられた場合などが考えられるのう。
順位を定める条文を並べて
| 条文 | 場面 | 基準 |
|---|---|---|
| 民法329条1項 | 一般の先取特権どうし | 民法306条の列挙順 |
| 民法330条1項 | 動産の先取特権どうし | 列挙順(保存者は後の者が優先) |
| 民法331条1項 | 不動産の先取特権どうし | 民法325条の列挙順 |
| 民法331条2項 | 順次売買の売主間 | 売買の前後 |
| 民法334条 | 先取特権 × 動産質権 | 動産質権者=第1順位 |
| 民法355条 | 動産質権どうし | 設定の前後 |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
こうして並べると、民法の順位の決め方は3通りじゃ。条文の列挙順、時間の前後、そして別の権利と同一視する——それだけと掴んでおけばよい。
第九章第二節を振り返る
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 民法352条 | 動産質の対抗要件(継続占有) |
| 民法353条 | 占有の回復(占有回収の訴えによってのみ) |
| 民法354条 | 動産質権の実行 |
| 民法355条 | 動産質権の順位 |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
4か条だけなんだ。すっきりしてる。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
第一節「総則」(民法342条〜351条)が土台を作っておるからのう。総則で共通のことを定め、各節で固有のことだけを書く——民法の構えじゃな。
この先には第三節「不動産質」(民法356条〜)、第四節「権利質」(民法362条〜)が続き、そして第十章「抵当権抵当権目的物の占有を移さずに設定できる担保物権(民法369条以下)。先取特権の効力については、その性質に反しない限り抵当権の規定が準用されます(民法341条)。用語ページを見る →」(民法369条〜)が待っておるぞ。
資格別の演習
同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法355条がそのとおり定めています。
同一の動産について数個の質権が設定されたときは、各質権者は債権額の割合に応じて弁済を受ける。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法355条は「設定の前後による」と順位を定めています。債権額の割合に応じて弁済を受けるのは、同一順位の先取特権者についての民法332条です。
先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は民法330条による第1順位の先取特権者と同一の権利を有する。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法334条がそのとおり定めています。質権どうしの順位を定める民法355条とは場面が異なります。