民法第239条・物権
民法第239条:無主物の帰属
持ち主のいない動産は、拾って自分のものにできます。ところが不動産は国庫へ——同じ条文のなかで、動産と不動産の運命が正反対に分かれます。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
海で拾った貝がらは、わたしのものになる?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
民法239条じゃな。ここから第二節「所有権の取得」が始まる。誰のものでもない物を、誰のものにするかを定める区画じゃ。
1項:無主物先占
所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
| 要素 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 対象 | 所有者のない動産 |
| 要件 | 所有の意思をもって占有すること |
| 効果 | その所有権を取得する |
これを無主物先占無主物先占所有者のない動産を、所有の意思をもって占有することで所有権を取得すること(民法239条1項)。所有者のない不動産は国庫に帰属します(同条2項)。用語ページを見る →と呼びます。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「所有の意思所有の意思その物を自分のものとして持つ意思のこと。民法162条の取得時効の要件であり、所有権以外の財産権については「自己のためにする意思」とされます(民法163条)。用語ページを見る →をもって占有」——民法162条の取得時効と同じ言葉だ!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よう覚えておったのう。じゃが期間が要らぬ。時効は10年・20年を待つが、無主物先占は占有を始めればそれで足りる。もともと誰のものでもないゆえ、待たせる理由がないのじゃ。
2項:不動産は国庫に帰属する
所有者のない不動産は、国庫に帰属する。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
えっ、土地は拾えないの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文が正面から「国庫に帰属する」と言い切っておる。誰も先占できぬ。
動産動産不動産以外の物のこと(民法86条2項)。条文が「すべて」としているため、有体物は不動産か動産のいずれかに必ず分類されます。用語ページを見る →と不動産不動産土地及びその定着物のこと(民法86条1項)。価値の高低ではなく、土地に定着しているかどうかで動産と区別されます。用語ページを見る →で、同じ条文のなかで結論が逆になっておるのじゃ。土地は限りあるもので、しかも登記登記不動産の権利関係を法務局の登記簿に記録して公示する制度。不動産の物権変動は、登記をしないと第三者に主張できません。用語ページを見る →という公示制度に載っておる。空き地を早い者勝ちにはできぬ、というのが2項の構えじゃな。
判例:国庫帰属を理由とする所有権確認の訴え
最判平成23年6月3日(集民第237号9頁)
判示事項は「土地を時効取得したと主張する者が,当該土地は所有者が不明であるから国庫に帰属していたとして,国に対し当該土地の所有権を有することの確認を求める訴えにつき,確認の利益を欠くとされた事例」です。
裁判要旨は、表題部所有者の登記も所有権の登記もない土地についてのその訴えは、次の事情のもとでは確認の利益を欠く、としています。
(1) 国は,当該土地が国の所有に属していないことを自認している。 (2) 国は,上記の者が主張する取得時効の起算点よりも前に当該土地の所有権を失った。 (3) 上記の者において,当該土地につき自己を表題部所有者とする登記の申請をした上で保存登記の申請をする手続を尽くしたにもかかわらず所有名義を取得することができなかったなどの事情もうかがわれない。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「所有者が分からない=国のもの」とは限らないんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨の(1)を見よ。国みずからが「自分の土地ではない」と認めておる。民法239条2項が働くのは「所有者のない不動産」じゃ。所有者が分からぬことと、所有者がいないことは別じゃからな。
なお、この要旨が述べておるのは確認の利益を欠くという訴訟上の判断までじゃ。それ以上を読み込まぬようにな。
資格別の演習
所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
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解答:◯
正しい記述です。民法239条1項がそのとおり定めています。これを無主物先占といいます。
所有者のない不動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得することができる。
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解答:×
誤りです。民法239条2項は「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」と定めています。無主物先占の対象は動産に限られます。
民法239条1項により所有権を取得するには、一定期間の占有の継続が必要である。
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解答:×
誤りです。条文は「所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する」と定めるのみで、期間の要件を置いていません。期間を要件とするのは民法162条の取得時効です。