民法第145条・総則
民法第145条:時効の援用
時効は当事者が援用しなければ、裁判所はこれによって裁判ができません。消滅時効については、保証人・物上保証人・第三取得者らも括弧書きで当事者に含まれます。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
時効の期間が過ぎたら、自動的に権利が消えたり手に入ったりするの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そうはならぬ。民法145条が「当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない」と定めておる。誰かが持ち出さねば、裁判では使えぬのじゃ。
条文の内容
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 当事者(括弧書きあり) |
| 何を | 援用援用時効による利益を受けると主張すること。当事者が援用しなければ、裁判所は時効によって裁判をすることができません(民法145条)。用語ページを見る →しなければ |
| 効果 | 裁判所がこれによって裁判をすることができない |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「時効の効力が生じない」じゃなくて、「裁判所が裁判をすることができない」なんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文の書きぶりをよう見たのう。裁判所の側を縛る形になっておる。期間が過ぎたことを裁判所が知っておっても、当事者が持ち出さぬ限り、それを前提に判断してはならぬ、ということじゃな。
時効で利益を受ける者が「そんな主張はしたくない」と思うこともある。使うかどうかを本人に委ねる——それが援用という仕組みじゃ。
括弧書き:消滅時効の当事者
(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)
| 括弧書きが挙げる者 |
|---|
| 保証人 |
| 物上保証人 |
| 第三取得者 |
| その他権利の消滅について正当な利益を有する者 |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
借りた本人じゃなくても援用できるんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこじゃ。消滅時効消滅時効権利を行使しないまま一定期間が過ぎることで、その権利が消滅する時効のこと。債権は知った時から5年、行使できる時から10年です(民法166条1項)。用語ページを見る →で債権が消えれば、保証人は保証債務から解放され、担保を提供した者は担保を失わずに済む。利益を受けるのは債務者だけではないのじゃ。
そして末尾に「その他権利の消滅について正当な利益を有する者」という受け皿が置いてある。3つの例示に限らぬ、という書き方じゃな。
なお括弧書きは「消滅時効にあっては」と限っておる。取得時効取得時効一定期間の占有や権利の行使によって、その権利を取得する時効のこと(民法162条・163条)。所有権なら20年、占有開始時に善意無過失なら10年です。用語ページを見る →については、この列挙は付いておらぬぞ。
判例:共同相続人による援用の限度
最判平成13年7月10日(集民第202号645頁)
判示事項は「被相続人の占有により取得時効が完成した場合において共同相続人の一人が取得時効を援用することができる限度」です。裁判要旨は次のとおりです。
被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。
| 論点 | 裁判要旨の判断 |
|---|---|
| 共同相続人の1人ができること | 自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用できる |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
ひとりが援用しても、全部が自分のものになるわけじゃないんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨はそう述べておる。援用は援用した者の分だけ効くのじゃな。民法113条のところで見た無権代理と共同相続の判例(最判平成5年1月21日)とも、発想が通じるところがあるのう。他の相続人の意思を、勝手に引き受けはせぬのじゃ。
援用と放棄
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 民法145条 | 援用しなければ、裁判所は裁判できない |
| 民法146条 | 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
145条が「使うかどうかは本人次第」と定め、146条が「先に手放させることは許さぬ」と続く。使う自由は認めるが、使わせない仕組みは作らせぬ——対になっておるのじゃ。
資格別の演習
時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
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解答:◯
正しい記述です。民法145条がそのとおり定めています。期間が経過しただけでは足りず、当事者の援用援用時効による利益を受けると主張すること。当事者が援用しなければ、裁判所は時効によって裁判をすることができません(民法145条)。用語ページを見る →が必要です。
消滅時効については、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者も、時効を援用することができる。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法145条の括弧書きが、消滅時効について「当事者」にこれらの者を含むと定めています。末尾に「その他権利の消滅について正当な利益を有する者」という受け皿も置かれています。
判例によれば、被相続人の占有により取得時効が完成した場合、共同相続人の一人は、その全部について取得時効を援用することができる。
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解答:×
誤りです。最判平成13年7月10日(集民第202号645頁)の裁判要旨は「その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる」としています。
民法145条の括弧書きにより、取得時効についても、保証人や物上保証人が当事者に含まれる。
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解答:×
誤りです。民法145条の括弧書きは「消滅時効にあっては」と限定しており、取得時効取得時効一定期間の占有や権利の行使によって、その権利を取得する時効のこと(民法162条・163条)。所有権なら20年、占有開始時に善意無過失なら10年です。用語ページを見る →については保証人・物上保証人・第三取得者の列挙は置かれていません。