民法第19条・総則
民法第19条:審判相互の関係
後見・保佐・補助が同時にかからないよう、新しい審判をするときは前の審判を取り消さなければならないと定めます。制度を乗り換えるときの整理を一手に引き受ける条文です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
被保佐人だった人の状態が重くなって、後見が必要になったら? 保佐と後見が両方かかっちゃうの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
かからぬ。そこを引き受けるのが民法19条じゃ。古いほうを取り消さなければならない——それも「できる」ではなく「なければならない」と、きっぱり書いてあるぞ。
条文の内容
1項:後見開始の審判をする場合
後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 場面 | 後見開始の審判後見開始の審判精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人について、家庭裁判所が後見を開始すると決める裁判(民法7条)。用語ページを見る →をする場合 |
| 条件 | 本人がすでに被保佐人被保佐人事理を弁識する能力が著しく不十分だとして、保佐開始の審判を受けた人(民法12条)。民法13条1項が列挙する重要な行為をするには、保佐人の同意が必要です。用語ページを見る →又は被補助人被補助人事理を弁識する能力が不十分だとして、補助開始の審判を受けた人(民法16条)。同意が必要になるのは、審判で個別に定められた特定の法律行為だけです。用語ページを見る →であること |
| 効果 | 家庭裁判所家庭裁判所家庭に関する事件などを扱う裁判所。後見・保佐・補助を開始する審判と、その取消しの審判はここが行います。用語ページを見る →は、その本人に係る保佐開始の審判保佐開始の審判精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である人について、家庭裁判所が保佐を開始すると決める裁判(民法11条)。用語ページを見る →又は補助開始の審判補助開始の審判精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である人について、家庭裁判所が補助を開始すると決める裁判(民法15条1項)。用語ページを見る →を取り消さなければならない |
2項:保佐・補助の場合への準用
前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。
準用によって、次の4通りがカバーされます。
| これからする審判 | 本人の現在の地位 | 取り消される審判 |
|---|---|---|
| 保佐開始 | 成年被後見人成年被後見人後見開始の審判を受けた人のこと(民法8条)。その法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除いて取り消すことができます。用語ページを見る → | 後見開始の審判 |
| 保佐開始 | 被補助人被補助人事理を弁識する能力が不十分だとして、補助開始の審判を受けた人(民法16条)。同意が必要になるのは、審判で個別に定められた特定の法律行為だけです。用語ページを見る → | 補助開始の審判 |
| 補助開始 | 成年被後見人成年被後見人後見開始の審判を受けた人のこと(民法8条)。その法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除いて取り消すことができます。用語ページを見る → | 後見開始の審判 |
| 補助開始 | 被保佐人被保佐人事理を弁識する能力が著しく不十分だとして、保佐開始の審判を受けた人(民法12条)。民法13条1項が列挙する重要な行為をするには、保佐人の同意が必要です。用語ページを見る → | 保佐開始の審判 |
1項の2通りとあわせて、3制度のあらゆる乗り換えの組合せが尽くされています。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
重くなるときも、軽くなるときも、どっちも書いてあるんだ!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そうじゃ。1項は重い方向(後見へ)だけを書いておるが、2項の準用で軽い方向も拾っておる。条文を節約する、うまい書き方じゃな。
「重ならない」を支える3つの仕組み
3つの制度が同時にかからないよう、民法は3か所に仕掛けを置いています。
| 仕掛け | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 開始時のただし書 | 民法11条ただし書 | 民法7条の原因がある者に保佐開始の審判はできない |
| 開始時のただし書 | 民法15条1項ただし書 | 民法7条又は民法11条本文の原因がある者に補助開始の審判はできない |
| 乗り換えの整理 | 民法19条 | 新しい審判をするときは、前の審判を取り消さなければならない |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
ただし書は「そもそも重ねて審判できない」という入口の仕切り。19条は「状態が変わって乗り換えるとき、古い審判を消す」という後始末。ふたつは働く場面が違うぞ。
民法10条・14条・18条の取消しとの違い
同じ「審判の取消し」でも、根拠と場面が異なります。
| 民法10条・14条1項・18条1項 | 民法19条 | |
|---|---|---|
| きっかけ | 原因が消滅したこと | 別の制度の審判をすること |
| 請求の要否 | 条文が列挙する者の請求により | 条文に請求の定めなし |
| 結果 | その人は制限を外れる | 別の制度に移る |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
10条や14条は「もう要らなくなったから終わり」。19条は「別のに乗り換えるから前のを消す」。目的が違うんだね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よくまとまったのう。……これで民法11条から19条まで、保佐と補助の骨格をひととおり見たことになる。残る民法20条は、いよいよ相手方の側に目を向けた条文じゃ。
資格別の演習
後見開始の審判をする場合において、本人が被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る補助開始の審判を取り消さなければならない。
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解答:◯
正しい記述です。民法19条1項は、後見開始の審判後見開始の審判精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人について、家庭裁判所が後見を開始すると決める裁判(民法7条)。用語ページを見る →をする場合に本人が被保佐人被保佐人事理を弁識する能力が著しく不十分だとして、保佐開始の審判を受けた人(民法12条)。民法13条1項が列挙する重要な行為をするには、保佐人の同意が必要です。用語ページを見る →又は被補助人被補助人事理を弁識する能力が不十分だとして、補助開始の審判を受けた人(民法16条)。同意が必要になるのは、審判で個別に定められた特定の法律行為だけです。用語ページを見る →であるときについて、そのとおり定めています。「取り消すことができる」ではなく「取り消さなければならない」です。
補助開始の審判をする場合において、本人が被保佐人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始の審判を取り消さなければならない。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法19条2項が1項を準用しており、補助開始の審判をする場合に本人が成年被後見人成年被後見人後見開始の審判を受けた人のこと(民法8条)。その法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除いて取り消すことができます。用語ページを見る →若しくは被保佐人被保佐人事理を弁識する能力が著しく不十分だとして、保佐開始の審判を受けた人(民法12条)。民法13条1項が列挙する重要な行為をするには、保佐人の同意が必要です。用語ページを見る →であるときが含まれます。重い制度から軽い制度への乗り換えも、同条の対象です。
被保佐人について後見開始の審判がされた場合、保佐開始の審判は、本人、配偶者又は四親等内の親族の請求があってはじめて取り消される。
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解答:×
誤りです。民法19条1項は請求を要件としておらず、家庭裁判所家庭裁判所家庭に関する事件などを扱う裁判所。後見・保佐・補助を開始する審判と、その取消しの審判はここが行います。用語ページを見る →が後見開始の審判後見開始の審判精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人について、家庭裁判所が後見を開始すると決める裁判(民法7条)。用語ページを見る →をする場合に「取り消さなければならない」と定めています。請求権者が列挙されているのは、原因の消滅による取消しを定めた民法10条・14条1項・18条1項の側です。