民法第3条の2・総則

民法第3条の2:意思能力

意思表示をした時に意思能力がなかったなら、その法律行為は無効です。年齢や審判で線を引く行為能力の制度と対になる、その土台にあたる条文です。

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レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

お酒に酔って何も分からなくなっている人にサインさせた契約って、有効になっちゃうの?

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

ならぬ。民法3条の2が、そこをたった一文で決着させておる。意思表示をした時に意思能力意思能力いしのうりょく自分のした行為がどんな結果を生むかを判断できる能力のこと。これを欠いた状態でした法律行為は無効です(民法3条の2)。用語ページを見る →がなかったなら、その法律行為法律行為ほうりつこうい契約や遺言のように、意思表示を要素として、その意思のとおりの法律効果を生じさせる行為のこと。用語ページを見る →は無効じゃ。

条文の内容

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

要件と効果に分けると、こうなります。

要件

  1. 法律行為法律行為ほうりつこうい契約や遺言のように、意思表示を要素として、その意思のとおりの法律効果を生じさせる行為のこと。用語ページを見る →の当事者であること
  2. 意思表示をした時に意思能力意思能力いしのうりょく自分のした行為がどんな結果を生むかを判断できる能力のこと。これを欠いた状態でした法律行為は無効です(民法3条の2)。用語ページを見る →を有しなかったこと

効果

  • その法律行為法律行為ほうりつこうい契約や遺言のように、意思表示を要素として、その意思のとおりの法律効果を生じさせる行為のこと。用語ページを見る →無効無効むこうはじめから法律効果が生じないこと。取消しと違い、誰かが主張しなくても効力はありません。用語ページを見る →

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

「意思表示をした時に」って、わざわざ書いてあるんだね。

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

そこが肝じゃ。ふだんは判断できる人でも、その瞬間に判断できていなければ無効になる。逆に、ふだん心もとない人でも、その瞬間に分かっておったなら、この条文では無効にならん。

行為能力制度との違い

意思能力意思能力いしのうりょく自分のした行為がどんな結果を生むかを判断できる能力のこと。これを欠いた状態でした法律行為は無効です(民法3条の2)。用語ページを見る →行為能力行為能力こういのうりょく自分ひとりで確定的に有効な法律行為をすることができる資格のこと。年齢や審判によって画一的に決まる点が、行為ごとに判断される意思能力と違います。用語ページを見る →は、守り方の設計思想がまるで違います。

意思能力(民法3条の2) 行為能力(民法4条以下)
判定 意思表示をした時ごとに個別に判断 年齢や家庭裁判所の審判により画一的に決まる
効果 無効 取り消すことができる
主張できる人 条文に限定なし 民法120条1項が限定(制限行為能力者制限行為能力者せいげんこういのうりょくしゃ未成年者・成年被後見人・被保佐人・民法17条1項の審判を受けた被補助人の4者をまとめた呼び名(民法13条1項10号)。用語ページを見る →、その代理人・承継人・同意をすることができる者)
外から見て分かるか 分かりにくい 年齢や登記により確認できる

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

「その時どうだったか」を毎回立証するのは、本人にも相手にも重い。そこであらかじめ線を引いておくのが行為能力の制度じゃ。意思能力という土台の上に、使いやすい仕組みを載せておる、と考えるとよいのう。

なお、意思能力意思能力いしのうりょく自分のした行為がどんな結果を生むかを判断できる能力のこと。これを欠いた状態でした法律行為は無効です(民法3条の2)。用語ページを見る →を欠く状態でした行為は、同時に制限行為能力者制限行為能力者せいげんこういのうりょくしゃ未成年者・成年被後見人・被保佐人・民法17条1項の審判を受けた被補助人の4者をまとめた呼び名(民法13条1項10号)。用語ページを見る →としての取消しの対象にもなり得ます。たとえば成年被後見人成年被後見人せいねんひこうけんにん後見開始の審判を受けた人のこと(民法8条)。その法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除いて取り消すことができます。用語ページを見る →がした行為は民法9条により取り消すことができますが、その意思表示の時に意思能力がなかったのであれば、民法3条の2により無効でもあります。

無効になったあと、受け取ったものはどうなるか

民法121条の2第1項は、無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負うと定めます。

ただし同条3項は、行為の時に意思能力を有しなかった者について、次のように軽くしています。

その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

つまり、返すのは現存利益現存利益げんぞんりえき受け取ったもののうち、返還を求められた時点で現に手元に残っている利益のこと。意思能力を欠いていた者や制限行為能力者は、この限度で返せば足ります(民法121条の2第3項)。用語ページを見る →の範囲でよい、ということです。同項後段は、行為の時に制限行為能力者であった者についても同様と定めています。

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

無効だから全部返せ、じゃないんだ。

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

判断できぬ状態で受け取ったものを使い切ってしまった者に、全額返せというのは酷じゃからのう。守るために無効にしたのに、後始末で追い詰めては本末転倒じゃ。

意思表示を「受け取る」側の能力

民法98条の2は、意思表示の相手方の側について定めています。相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき、または未成年者未成年者みせいねんしゃ18歳に達していない人のこと(民法4条の反対解釈)。法律行為をするには、原則として法定代理人の同意が必要です。用語ページを見る →もしくは成年被後見人成年被後見人せいねんひこうけんにん後見開始の審判を受けた人のこと(民法8条)。その法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除いて取り消すことができます。用語ページを見る →であったときは、その意思表示をもって相手方に対抗することができません。

ただし、次の者がその意思表示を知った後は、対抗できます。

  1. 相手方の法定代理人法定代理人ほうていだいりにん本人が選んだのではなく、法律の規定によって代理権を与えられた人のこと。未成年者の親権者や成年後見人がこれにあたります。用語ページを見る →
  2. 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方

資格別の演習

宅建正誤問題AI生成類題

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかった場合、その法律行為は取り消すことができる。

解答・解説を見る

解答:×

誤りです。民法3条の2は「その法律行為は、無効とする」と定めています。取消し取消しとりけし一応有効に成立した法律行為を、取消権者の主張によってはじめにさかのぼって無効とすること。用語ページを見る →ではなく無効無効むこうはじめから法律効果が生じないこと。取消しと違い、誰かが主張しなくても効力はありません。用語ページを見る →である点が繰り返し問われます。取消しになるのは、制限行為能力者制限行為能力者せいげんこういのうりょくしゃ未成年者・成年被後見人・被保佐人・民法17条1項の審判を受けた被補助人の4者をまとめた呼び名(民法13条1項10号)。用語ページを見る →がした行為(民法5条2項・9条など)の側です。

行政書士正誤問題AI生成類題

意思能力の有無は、意思表示をした時を基準として判断される。

解答・解説を見る

解答:

正しい記述です。民法3条の2は「意思表示をした時に意思能力を有しなかったとき」と、判断の基準時を条文上明示しています。ふだんの判断能力ではなく、その意思表示の時点が基準です。

司法書士正誤問題AI生成類題

行為の時に意思能力を有しなかった者は、無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた場合であっても、その行為によって現に利益を受けている限度において返還の義務を負えば足りる。

解答・解説を見る

解答:

正しい記述です。民法121条の2第1項は原状回復義務を原則としますが、同条3項前段は、行為の時に意思能力を有しなかった者の返還義務を現存利益現存利益げんぞんりえき受け取ったもののうち、返還を求められた時点で現に手元に残っている利益のこと。意思能力を欠いていた者や制限行為能力者は、この限度で返せば足ります(民法121条の2第3項)。用語ページを見る →の限度に軽減しています。同項後段により、行為の時に制限行為能力者制限行為能力者せいげんこういのうりょくしゃ未成年者・成年被後見人・被保佐人・民法17条1項の審判を受けた被補助人の4者をまとめた呼び名(民法13条1項10号)。用語ページを見る →であった者も同様です。

司法試験正誤問題AI生成類題

意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者であった場合、表意者は、相手方の法定代理人がその意思表示を知った後であっても、その意思表示をもって相手方に対抗することができない。

解答・解説を見る

解答:×

誤りです。民法98条の2は、相手方が受領時に意思能力を有しなかったとき、または未成年者・成年被後見人であったときは意思表示を対抗できないとしつつ、ただし書で、相手方の法定代理人法定代理人ほうていだいりにん本人が選んだのではなく、法律の規定によって代理権を与えられた人のこと。未成年者の親権者や成年後見人がこれにあたります。用語ページを見る →、または意思能力を回復し若しくは行為能力者となった相手方がその意思表示を知った後は、この限りでないとしています。

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