民法第3条・総則

民法第3条:権利能力(私権の享有は出生に始まる)

人は生まれた瞬間に、権利を持ち義務を負う資格を得ます。外国人も原則として私権を享有します。胎児がどう扱われるかは、民法の別の条文が例外を置いています。

  • 行政書士
  • 司法書士
  • 司法試験

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

「私権の享有は、出生に始まる」……生まれた瞬間から、赤ちゃんも土地を持てるってこと? 契約なんてできないのに?

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

持てるのじゃよ。権利を持てるか自分で契約できるかは、まったく別の話でのう。ここを混ぜると民法総則は最後まで混乱するぞ。

条文の内容

民法3条は2つの項からなります。

1項:私権の享有は、出生に始まる

権利能力権利能力けんりのうりょく権利を持ち、義務を負うことができる資格のこと。民法3条1項により、人は出生と同時にこれを取得します。用語ページを見る →——権利を持ち、義務を負うことができる資格——は、出生と同時に、すべての人に等しく与えられます。年齢も、判断能力も、資産も関係ありません。

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

じゃあ生まれたばかりの子でも、おじいちゃんの土地を相続して所有者になれるんだ!

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

そのとおり。ただし、その土地を自分で売り買いするのは別問題じゃ。そちらは行為能力行為能力こういのうりょく自分ひとりで確定的に有効な法律行為をすることができる資格のこと。年齢や審判によって画一的に決まる点が、行為ごとに判断される意思能力と違います。用語ページを見る →の話で、民法4条以下が扱っておる。

2項:外国人も私権を享有する

外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き私権私権しけん所有権や債権のように、私人と私人との間で認められる権利のこと。国と国民の関係で問題になる公法上の権利と区別されます。用語ページを見る →を享有します。原則は享有、禁止するには法令か条約の根拠が要る、という組み立てです。

「3つの能力」を混同しない

民法総則の最初のつまずきどころが、名前の似た3つの「能力」です。

能力 内容 根拠条文 判定の仕方
権利能力権利能力けんりのうりょく権利を持ち、義務を負うことができる資格のこと。民法3条1項により、人は出生と同時にこれを取得します。用語ページを見る → 権利を持ち義務を負える資格 民法3条1項 出生していれば一律にある
意思能力意思能力いしのうりょく自分のした行為がどんな結果を生むかを判断できる能力のこと。これを欠いた状態でした法律行為は無効です(民法3条の2)。用語ページを見る → 自分の行為の結果を判断できる能力 民法3条の2 意思表示をした時ごとに判断する
行為能力行為能力こういのうりょく自分ひとりで確定的に有効な法律行為をすることができる資格のこと。年齢や審判によって画一的に決まる点が、行為ごとに判断される意思能力と違います。用語ページを見る → ひとりで確定的に有効な法律行為ができる資格 民法4条以下 年齢や審判により画一的に決まる

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

権利能力は「持てるか」、意思能力は「分かっていたか」、行為能力は「ひとりでやれるか」。この3語で唱えて覚えるのじゃ。

胎児はどう扱われるのか

1項が「出生に始まる」と書いている以上、まだ生まれていない胎児には、原則として権利能力権利能力けんりのうりょく権利を持ち、義務を負うことができる資格のこと。民法3条1項により、人は出生と同時にこれを取得します。用語ページを見る →がありません。しかし民法は、これでは不都合な場面について、個別に例外を置いています。

場面 条文 定め方
損害賠償の請求権 民法721条 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす
相続 民法886条1項 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす
遺贈 民法965条 民法886条・891条の規定を受遺者について準用する

相続については、さらに歯止めがあります。民法886条2項は、胎児が死体で生まれたときは1項を適用しないと定めています。

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

「原則は生まれてから。でも、この3つの場面だけは生まれたものとみなす」——覚えるのはこの3つでいいんだね。

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

条文にそう書いてある場面だけ、が正確な言い方じゃな。「胎児にも一般に権利能力がある」と一般化してはいかんぞ。

資格別の演習

行政書士正誤問題AI生成類題

私権の享有は出生に始まるから、出生した者であっても、意思能力を有しない間は権利能力を取得しない。

解答・解説を見る

解答:×

誤りです。民法3条1項は「私権の享有は、出生に始まる」と定めるのみで、判断能力を要件としていません。権利能力権利能力けんりのうりょく権利を持ち、義務を負うことができる資格のこと。民法3条1項により、人は出生と同時にこれを取得します。用語ページを見る →は出生により一律に取得します。意思能力意思能力いしのうりょく自分のした行為がどんな結果を生むかを判断できる能力のこと。これを欠いた状態でした法律行為は無効です(民法3条の2)。用語ページを見る →の有無が問題になるのは、その人がした法律行為法律行為ほうりつこうい契約や遺言のように、意思表示を要素として、その意思のとおりの法律効果を生じさせる行為のこと。用語ページを見る →の効力(民法3条の2)の場面です。

司法書士正誤問題AI生成類題

外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

解答・解説を見る

解答:

正しい記述です。民法3条2項がそのとおり定めています。原則として享有し、これを禁止するには法令又は条約の規定という根拠が必要である、という構造を押さえてください。

司法試験正誤問題AI生成類題

胎児は、相続については既に生まれたものとみなされるから、胎児が死体で生まれた場合であっても、相続開始の時にさかのぼって相続人となる。

解答・解説を見る

解答:×

誤りです。民法886条1項は胎児を相続については既に生まれたものとみなしますが、同条2項は「前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない」と定めています。なお、損害賠償の請求権については民法721条が、遺贈については民法965条が、それぞれ胎児に関する定めを置いています。

一次情報を確認する