刑法第54条・総則

刑法第54条:一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理

観念的競合と牽連犯を定める科刑上一罪の条文です。「最も重い刑により処断する」とは何を意味するのか、罰金の多額と公訴時効についての判例まで確認します。

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レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

1回の行為で2つの罪になったら、刑も2つ?

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

そこで登場するのが第54条じゃ。罪は2つ成立するが、刑は1つ。この「科刑上一罪」という考え方が、罪数論の中心にある。

条文の内容

項 内容
1項 1個の行為が2個以上の罪名に触れ、または犯罪の手段もしくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する
2項 刑法49条2項の規定(2個以上の没収は併科する)は、1項の場合にも適用する

1項の2つの型

型 条文の言葉 呼び名
前段 1個の行為が2個以上の罪名に触れる 観念的競合観念的競合かんねんてききょうごう1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合のこと(刑法54条1項前段)。最も重い刑により処断されます。用語ページを見る →
後段 犯罪の手段もしくは結果である行為が他の罪名に触れる 牽連犯牽連犯けんれんぱん犯罪の手段または結果である行為が他の罪名に触れる場合のこと(刑法54条1項後段)。最も重い刑により処断されます。用語ページを見る →

どちらも科刑上一罪科刑上一罪かけいじょういちざい複数の罪名に触れるが、刑を科すうえでは1個の罪として最も重い刑により処断されるもの。刑法54条1項の観念的競合と牽連犯がこれにあたります。用語ページを見る →であり、最も重い刑により処断されます。併合罪併合罪へいごうざい確定裁判を経ていない2個以上の罪のこと(刑法45条前段)。ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪と裁判確定前に犯した罪だけが併合罪になります(同条後段)。用語ページを見る →のように47条で加重するのではありません。

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

併合罪とは全然ちがう扱いなんだね。

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

そうじゃ。併合罪は加重、科刑上一罪は最も重い刑で処断。まずこの対比を頭に入れよ。

判例——牽連犯の範囲は広くない

最判平成17年4月14日は、恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても、両罪は牽連犯の関係にはないと判示しました。手段と目的の関係にあるように見えても、それだけで後段にあたるわけではありません。

判例——「最も重い刑により処断する」の中身

最判令和2年10月1日は、数罪が科刑上一罪の関係にある場合において、各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪および軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり、軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときは、罰金刑の多額は軽い罪のそれによるべきであるとしました。

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

「軽いほうの罪の罰金」が上限になることがあるんだ!

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

「最も重い刑により処断する」は、重い罪の法定刑をそのまま使うという意味ではないのじゃ。刑種ごとに見ていく必要がある。

判例——観念的競合と公訴時効

最決昭和63年2月29日は、結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合につき公訴時効完成の有無を判定するに当たっては、その全部を一体として観察すべきであり、最終の結果が生じたときから起算して公訴時効期間が経過していない以上、その全体について公訴時効は未完成であると判示しました。

科刑上一罪は、刑を科す場面だけでなく、時効の判断でも一体として扱われることがあるわけです。

2項——没収だけは併科される

1項の場合でも、刑法49条2項が適用され、2個以上の没収は併科されます。「最も重い刑により処断する」という一体処理の中で、没収だけが別扱いになる点に注意してください。

資格別の演習

司法書士正誤問題AI生成類題

1個の行為が2個以上の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

解答・解説を見る

解答:◯

正しい記述です。刑法54条1項前段(観念的競合)の定めです。併合罪のように加重するのではありません。

司法書士正誤問題AI生成類題

恐喝の手段として監禁が行われた場合、監禁罪と恐喝罪は牽連犯の関係に立つ。

解答・解説を見る

解答:×

誤りです。最判平成17年4月14日は、恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても、両罪は牽連犯の関係にはないと判示しています。

司法試験正誤問題AI生成類題

科刑上一罪の関係にある数罪について、重い罪と軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり、軽い罪の罰金刑の多額の方が多いときは、罰金刑の多額は軽い罪のそれによる。

解答・解説を見る

解答:◯

正しい記述です。最判令和2年10月1日の判示のとおりです。「最も重い刑により処断する」が、罰金の多額についてまで重い罪の定めによることを意味するわけではありません。

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

第55条は削除された条文じゃ。かつての連続犯の規定があったところじゃな。これで第九章はおしまい、次は第十章「累犯」に進むぞ。

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