民法第388条・物権
民法第388条:法定地上権
土地と建物が同一所有者のとき抵当権が実行されて所有者が分かれると、建物のために地上権が設定されたものとみなされます。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
自分の土地に自分の家を建ててる人が、土地だけに抵当権抵当権目的物の占有を移さずに設定できる担保物権(民法369条以下)。先取特権の効力については、その性質に反しない限り抵当権の規定が準用されます(民法341条)。用語ページを見る →を付けて、競売されちゃったら……家はどうなるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこじゃ。日本では土地と建物が別々の不動産じゃからのう。土地だけ他人のものになれば、建物は敷地を使う権利を失う。
そこで民法388条の**法定地上権法定地上権土地と建物が同一所有者に属する場合に抵当権が実行され所有者を異にするに至ったとき、建物のために設定されたものとみなされる地上権(民法388条)。当事者の合意なしに法律上生じます。用語ページを見る →**じゃ。法律が自動的に地上権地上権他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する物権(民法265条)。同じ「借りて使う」でも、債権である賃借権とは性質が異なります。用語ページを見る →を作り出す——民法でも屈指の重要条文じゃぞ。
条文の内容
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
| # | 要件 |
|---|---|
| ① | 土地及びその上に存する建物があること |
| ② | それが同一の所有者に属すること |
| ③ | その土地又は建物につき抵当権が設定されたこと |
| ④ | その実行により所有者を異にするに至ったこと |
| 効果 | その建物について、地上権が設定されたものとみなす |
| 地代 | 当事者の請求により、裁判所が定める |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「土地又は建物」! どっちに抵当権が付いてもいいんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そのとおりじゃ。土地だけでも、建物だけでも、あるいは両方でもよい。実行の結果、所有者が分かれることが肝じゃな。
「みなす」の強さ
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文は「地上権が設定されたものとみなす」と書く。当事者の合意は要らぬ。要件がそろえば当然に地上権が生じるのじゃ。
そして地代は裁判所が定める——ただし「当事者の請求により」じゃ。放っておけば裁判所は動かぬぞ。
「同一の所有者」はいつ判断するか
最高裁は、土地を目的とする一番抵当権設定当時に土地と地上建物の所有者が異なっていた事案について、次のように判断しました。
土地を目的とする一番抵当権設定当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかつた場合には、土地と建物が同一人の所有に帰した後に後順位抵当権が設定されたとしても、抵当権の実行により一番抵当権が消滅するときは、法定地上権は成立しない。 (最判平成2年1月22日・民集第44巻1号314頁)
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
一番抵当権のときに別の所有者だったら、後から同じ人になってもダメなんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
この判決が言うのは、抵当権の実行により一番抵当権が消滅するときは成立しない、ということじゃ。要旨の言葉をそのまま押さえよ。
先順位抵当権が解除で消えていた場合
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
では、一番抵当権が実行によってではなく、設定契約の解除によって消えていたら——最高裁は結論を分けておる。
土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後,甲抵当権が設定契約の解除により消滅し,その後,乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において,当該土地と建物が,甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても,乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは,法定地上権が成立する。 (最判平成19年7月6日・民集第61巻5号1940頁)
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
こっちは成立する! 平成2年の事案と何が違うんだろう。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨の言葉を並べてみよ。平成2年は「抵当権の実行により一番抵当権が消滅するとき」、平成19年は「甲抵当権が設定契約の解除により消滅し」じゃ。
先順位抵当権がどのように消えたか——要旨はそこを書き分けておる。それ以上のことを、わしは足さぬぞ。
土地が共有の場合
地上建物の共有者九人のうちの一人である土地共有者甲の債務を担保するため土地共有者の全員が共同して各持分に抵当権を設定し、かつ、甲以外の土地共有者らが甲の妻子である場合に、右抵当権の実行により甲だけについて民法三八八条本文の事由が生じたとしても、甲以外の土地共有者らが法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとみることができる客観的、外形的事実があるとはいえず、共有土地について法定地上権は成立しない。 (最判平成6年12月20日・民集第48巻8号1470頁)
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
共有共有一つの物を複数人で所有すること。各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用ができます(民法249条1項)。用語ページを見る →の土地では、甲だけについて388条本文の事由が生じても足りぬ。要旨は「法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとみることができる客観的、外形的事実」があるかを問うておる。妻子であるというだけでは、その事実があるとはいえぬ、と。
建物を建て替えたら
土地と建物に共同抵当共同抵当同一の債権の担保として数個の不動産に抵当権が設定されること。同時配当では各不動産の価額に応じて債権の負担を按分します(民法392条1項)。用語ページを見る →を設定した後、建物を取り壊して新築した場合について、最高裁は次のように判断しました。
所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない。 (最判平成10年7月3日・集民第189号95頁)
さらに、その「同順位の共同抵当権」を設定した場合であっても、成立が否定された事案があります。
所有者が、土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、建物を取り壊し、土地上に新たに建物を建築し、新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権を設定した場合であっても、新建物についての抵当権の被担保債権に優先する国税について執行裁判所に対し交付要求がされたときには、新建物のために法定地上権は成立しない。 (最判平成9年6月5日・民集第51巻5号2116頁)
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
同順位の共同抵当権を設定しても、ダメな場合があるんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そう。要旨は「新建物についての抵当権の被担保債権に優先する国税について執行裁判所に対し交付要求がされたとき」と、場面をきっちり限っておる。判例は事案の言葉で読む——これに尽きるのう。
資格別の演習
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について地上権が設定されたものとみなされる。
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解答:◯
正しい記述です。民法388条前段がそのとおり定めています。
法定地上権が成立した場合の地代は、常に裁判所が職権で定める。
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解答:×
誤りです。民法388条後段は「地代は、当事者の請求により、裁判所が定める」としています。
土地を目的とする一番抵当権設定当時に土地と地上建物の所有者が異なり法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合、土地と建物が同一人の所有に帰した後に後順位抵当権が設定されたとしても、抵当権の実行により一番抵当権が消滅するときは、法定地上権は成立しない。
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解答:◯
正しい記述です。最判平成2年1月22日(民集第44巻1号314頁)の裁判要旨がそのとおり判示しています。
所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、建物が取り壊され土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない。
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解答:◯
正しい記述です。最判平成10年7月3日(集民第189号95頁)の裁判要旨がそのとおり判示しています。
一次情報を確認する
- e-Gov法令検索:民法第388条
- 最判平成2年1月22日(民集 第44巻1号314頁)(昭和62(オ)452)
- 最判平成19年7月6日(民集 第61巻5号1940頁)(平成18(受)1398)
- 最判平成6年12月20日(民集 第48巻8号1470頁)(平成2(オ)663)
- 最判平成10年7月3日(集民 第189号95頁)(平成9(オ)128)
- 最判平成9年6月5日(民集 第51巻5号2116頁)(平成5(オ)2172)