民法第321条・物権
民法第321条:動産売買の先取特権
売った動産の代金と利息について、その動産から優先弁済を受けられます。物上代位をめぐる判例が実務の要です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
商品を売って、代金を払ってもらえないとき。売った物そのものから回収できる?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
民法321条じゃ。その動産について先取特権先取特権法律の規定に従い、債務者の財産から他の債権者に先立って弁済を受ける権利(民法303条)。当事者の契約ではなく法律によって当然に生じる担保物権です。用語ページを見る →を持つ。実務でもっともよく使われる先取特権のひとつじゃよ。
条文の内容
動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。
| 要素 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 被担保債権 | 動産の代価及びその利息 |
| 目的物 | その動産 |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
でも、売った相手が転売しちゃったら? 民法333条で行使できなくなるよね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
鋭いのう。そこで効いてくるのが民法304条の物上代位物上代位担保の目的物が売却・賃貸・滅失・損傷したときに、債務者が受けるべき金銭などに対して権利を行使すること(民法304条1項)。払渡し又は引渡しの前に差押えが必要です。用語ページを見る →じゃ。転売代金債権を差し押さえる——これが実務の主戦場でな、判例も豊富じゃ。
判例
最判平成17年2月22日(民集第59巻2号314頁)
判示事項は「動産売買の先取特権者による物上代位権の行使と目的債権の譲渡」です。裁判要旨は次のとおりです。
動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
債権が譲渡されて対抗要件まで備わったら、もう追いかけられないんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
民法304条1項ただし書が「その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」としておったのを思い出すのじゃ。急がねばならぬ権利——その帰結じゃな。
最決平成10年12月18日(民集第52巻9号2024頁)
判示事項の一は「請負工事に用いられた動産の売主が請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することの可否」です。裁判要旨の一は次のとおりです。
請負工事に用いられた動産の売主は、原則として、請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができないが、請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、右部分の請負代金債権に対して右物上代位権を行使することができる。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「原則として……できない」けど「特段の事情がある場合には……できる」。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
請負代金は、物の代金だけでなく工事の手間賃も含んでおるからのう。まるごと転売代金と同じとは言えぬ。じゃが要旨は、判断の物差しを2つ挙げておる。請負代金全体に占める当該動産の価額の割合と、請負契約における請負人の債務の内容じゃ。
要旨の二では、2080万円の請負代金のうち1740万円が機械の代金に相当する、という事実関係のもとで特段の事情が認められておる。具体的な数字まで要旨に現れておるのが手がかりになるのう。
第3順位
民法330条1項3号は、動産の売買の先取特権を第3順位としています。
| 順位 | 先取特権 |
|---|---|
| 1 | 不動産の賃貸、旅館の宿泊、運輸 |
| 2 | 動産の保存 |
| 3 | 動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務、工業の労務 |
資格別の演習
動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。
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解答:◯
正しい記述です。民法321条がそのとおり定めています。
判例によれば、動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後であっても、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
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解答:×
誤りです。最判平成17年2月22日(民集第59巻2号314頁)の裁判要旨は、この場合に物上代位権を行使することは「できない」としています。
判例によれば、請負工事に用いられた動産の売主は、請負代金債権の全部又は一部をその動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、その部分の請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができる。
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解答:◯
正しい記述です。最決平成10年12月18日(民集第52巻9号2024頁)の裁判要旨一がそのとおり述べています。原則としては行使できない点にも注意してください。