民法第299条・物権
民法第299条:留置権者による費用の償還請求
留置物に必要費や有益費を支出したら、所有者に償還させられます。占有者の民法196条と、そっくりでいて少し違う条文です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
留置している間に修理代がかかったら、それも払ってもらえるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
民法299条じゃ。民法196条の占有者の費用償還とよく似ておるが、少し違う。並べて読むのが早道じゃぞ。
1項:必要費
留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。
| 要素 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 対象 | 必要費必要費物の保存のために支出した費用のこと。占有者は回復者に償還させることができますが、果実を取得したときは通常の必要費は自己負担となります(民法196条1項)。用語ページを見る → |
| 相手 | 所有者 |
| 効果 | その償還をさせることができる |
2項:有益費
留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
| 要素 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 対象 | 有益費有益費物の改良のために支出した費用のこと。価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従って支出額か増価額の償還を受けられます(民法196条2項)。用語ページを見る → |
| 条件 | 価格の増加が現存する場合に限る |
| 金額 | 所有者の選択に従い、支出した金額又は増価額 |
| ただし書 | 裁判所は、所有者の請求により、相当の期限を許与できる |
民法196条との読み比べ
| 民法196条(占有者) | 民法299条(留置権者) | |
|---|---|---|
| 相手方 | 回復者 | 所有者 |
| 必要費のただし書 | 果実を取得したとき通常の必要費は占有者負担 | なし |
| 有益費の選択権 | 回復者 | 所有者 |
| 期限の許与 | 悪意の占有者に対して | 限定なし |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
1項にただし書がない! 民法196条1項は「果実を取得したときは……」があったのに。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よう見比べたのう。留置権者は民法297条により果実を自己の債権の弁済に充当できるが、それは果実果実物から生じる収益のこと。作物などの天然果実と、賃料などの法定果実があります(民法88条)。善意の占有者はこれを取得できます(民法189条1項)。用語ページを見る →を自分のものにする話とは別じゃ。だから196条1項ただし書のような調整は置かれておらぬ、と読める。
期限の許与も違うぞ。民法196条2項ただし書は「悪意の占有者に対しては」と絞っておったが、299条2項ただし書にはその絞りがない。条文が置いた限定の有無を、正確に押さえるのじゃ。
判例:保存に必要な範囲を超えた使用でも
最判昭和33年1月17日(民集第12巻1号55頁)
判示事項は「留置物の使用が物の保存に必要な範囲を超えた場合の必要費、有益費の支出とその償還請求権に基く留置権発生の有無」です。裁判要旨は次のとおりです。
留置権者が留置物について必要費、有益費を支出しその償還請求権を有するときは、物の保存に必要な範囲を超えた使用に基く場合であつたとしても、その償還請求権につき留置権の発生を妨げない。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
民法298条2項に違反する使い方をしていても、費用の償還請求権については留置権が発生するんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨はそう述べておる。費用の償還請求権それ自体は、留置物に関して生じた債権(民法295条1項)じゃからのう。
もっとも、違反があれば債務者は民法298条3項により留置権の消滅を請求できる。発生することと、消滅を請求されることは別問題——そこを取り違えぬようにな。
資格別の演習
留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。
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解答:◯
正しい記述です。民法299条1項がそのとおり定めています。
留置権者が有益費を支出した場合、留置権者の選択に従い、支出した金額又は増価額を償還させることができる。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法299条2項は「所有者の選択に従い」と定めています。
判例によれば、留置権者が留置物について必要費・有益費を支出しその償還請求権を有するときは、物の保存に必要な範囲を超えた使用に基づく場合であっても、その償還請求権につき留置権の発生を妨げない。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。最判昭和33年1月17日(民集第12巻1号55頁)の裁判要旨がそのとおり述べています。