民法第196条・物権

民法第196条:占有者による費用の償還請求

占有物のために支出したお金は返してもらえます。保存のための「必要費」と改良のための「有益費」で、返してもらえる条件が変わります。

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レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

自分の家だと思って、雨漏りを直したり、キッチンをきれいにしたりしたの。返せと言われたけど、かけたお金は?

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

民法196条が答えておる。修理代と改良代では、扱いが違う。そこが読みどころじゃ。

1項:必要費

占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。

要素 条文の言葉
対象 その物の保存のために支出した金額その他の必要費必要費ひつようひ物の保存のために支出した費用のこと。占有者は回復者に償還させることができますが、果実を取得したときは通常の必要費は自己負担となります(民法196条1項)。用語ページを見る →
原則 回復者から償還させることができる
ただし書 占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は占有者の負担

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

果実をもらったなら、普通の維持費は自分持ち……。なんだか公平だね。

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

民法189条1項で善意善意ぜんいある特定の事情や事実を『知らない』こと。道徳的な善悪とは関係ありません。用語ページを見る →の占有者は果実果実かじつ物から生じる収益のこと。作物などの天然果実と、賃料などの法定果実があります(民法88条)。善意の占有者はこれを取得できます(民法189条1項)。用語ページを見る →を取得できたじゃろう。実りを受け取っておきながら、日々の手入れ代まで請求するのは筋が通らぬ。ただし書は189条と対になっておるのじゃな。

それと「通常の必要費」と限定されておる点も見よ。大きな災害の修繕のような通常でない支出までは、ただし書の射程に入らぬ、と読める。

2項:有益費

占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

要素 条文の言葉
対象 占有物の改良のために支出した金額その他の有益費有益費ゆうえきひ物の改良のために支出した費用のこと。価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従って支出額か増価額の償還を受けられます(民法196条2項)。用語ページを見る →
条件 その価格の増加が現存する場合に限る
金額 回復者の選択に従い、支出した金額又は増価額
ただし書 悪意悪意あくいある特定の事情や事実を『知っている』こと。いじわるな心という意味ではありません。用語ページを見る →の占有者には、裁判所が相当の期限を許与できる

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

「回復者の選択」! 払うほうが安いほうを選べるってこと?

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

条文は「回復者の選択に従い」と書いておるだけで、理由までは述べておらぬ。じゃが選ぶのが占有者ではない、というのは条文からはっきり読み取れるのう。

ただし書もよく効くぞ。悪意の占有者に対しては、裁判所が支払いを待つ期限を与えられる。すぐには払わずともよくなる、ということじゃな。

必要費と有益費の対照

必要費(1項) 有益費(2項)
目的 保存 改良
償還の条件 (原則そのまま) 価格の増加が現存すること
金額 支出額 回復者の選択で支出額又は増価額
例外 果実を取得したとき通常の必要費は占有者負担 悪意の占有者には期限の許与

判例

最判昭和46年2月19日(民集第25巻1号135頁)

判示事項は「建物の賃借人が有益費を支出したのち建物の賃貸人が交替した場合と有益費の償還義務者」です。裁判要旨は次のとおりです。

建物の賃借人が有益費を支出したのち建物の所有権譲渡により賃貸人が交替したときは、特段の事情のないかぎり、新賃貸人が右有益費の償還義務を承継し、旧賃貸人は右償還義務を負わない。

最判昭和48年7月17日(民集第27巻7号798頁)

判示事項は「賃借人が賃借建物に附加した部分が滅失した場合と有益費償還請求権」です。裁判要旨は次のとおりです。

賃借人が賃借建物に附加した増・新築部分が、賃貸人に返還される以前に、賃貸人、賃借人いずれの責にも帰すべきでない事由により滅失したときは、特段の事情のないかぎり、右部分に関する有益費償還請求権は消滅する。

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

増築した部分が焼けてしまったら、お金は返ってこないんだ……。

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

条文の「価格の増加が現存する場合に限り」を思い出すのじゃ。増築部分が失われれば、増加した価格も残っておらぬ。判例の結論は、条文の文言と地続きじゃな。

なおどちらの判例も参照法条に民法608条2項が並んでおる。賃貸借の費用償還と、占有者の費用償還が重なる場面じゃ。

資格別の演習

宅建正誤問題AI生成類題

占有者が占有物を返還する場合、その物の保存のために支出した必要費を回復者から償還させることができる。

解答・解説を見る

解答:

正しい記述です。民法196条1項本文がそのとおり定めています。ただし果実を取得したときは、通常の必要費は占有者の負担となります。

行政書士正誤問題AI生成類題

有益費の償還について、占有者は支出した金額と増価額のいずれかを選択して請求することができる。

解答・解説を見る

解答:×

誤りです。民法196条2項は「回復者の選択に従い」と定めています。選択権は占有者ではなく回復者にあります。

司法書士正誤問題AI生成類題

判例によれば、建物の賃借人が有益費を支出したのち建物の所有権譲渡により賃貸人が交替したときは、特段の事情のない限り、新賃貸人が有益費の償還義務を承継する。

解答・解説を見る

解答:

正しい記述です。最判昭和46年2月19日(民集第25巻1号135頁)の裁判要旨がそのとおり述べています。旧賃貸人は償還義務を負いません。

司法試験正誤問題AI生成類題

判例によれば、賃借人が賃借建物に附加した増・新築部分が、返還前に当事者いずれの責めにも帰すべきでない事由により滅失したときは、特段の事情のない限り、その部分に関する有益費償還請求権は消滅する。

解答・解説を見る

解答:

正しい記述です。最判昭和48年7月17日(民集第27巻7号798頁)の裁判要旨がそのとおり述べています。民法196条2項が「価格の増加が現存する場合に限り」と定めていることと整合します。

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