民法第192条・物権
民法第192条:即時取得
無権利者から動産を買っても、善意無過失なら即時に権利を取得できます。動産取引の安全を支える中心条文を、要件ごとに分解して読みます。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
中古のカメラを買ったの。でも売った人の物じゃなかったら……わたし、返さなきゃいけないの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこを守るのが民法192条、即時取得即時取得取引行為によって平穏・公然と動産の占有を始めた者が、善意無過失であれば即時にその動産の権利を取得すること(民法192条)。無権利者から買っても保護される制度です。用語ページを見る →じゃ。知らずに買った者は、その場で権利を手に入れる。動産取引を成り立たせておる屋台骨じゃな。
条文の内容
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
要件を分解します。
| # | 要件 | 条文の言葉 |
|---|---|---|
| ① | 取引行為による | 取引行為によって |
| ② | 対象 | 動産の占有を始めた |
| ③ | 態様 | 平穏に、かつ、公然と |
| ④ | 主観 | 善意であり、かつ、過失がない |
効果は「即時にその動産について行使する権利を取得する」ことです。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「即時に」ってすごいね。時効みたいに待たなくていいんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこが名前の由来じゃ。民法162条の取得時効取得時効一定期間の占有や権利の行使によって、その権利を取得する時効のこと(民法162条・163条)。所有権なら20年、占有開始時に善意無過失なら10年です。用語ページを見る →が10年・20年を要するのに対し、こちらは占有を始めたその瞬間じゃ。じゃからこそ要件は厳しく絞られておる。
「取引行為によって」
条文が最初に置いた要件です。相続で受け継いだ場合や、拾った場合は「取引行為によって」占有を始めたとはいえません。
「動産」
不動産不動産土地及びその定着物のこと(民法86条1項)。価値の高低ではなく、土地に定着しているかどうかで動産と区別されます。用語ページを見る →は対象外です。不動産には登記登記不動産の権利関係を法務局の登記簿に記録して公示する制度。不動産の物権変動は、登記をしないと第三者に主張できません。用語ページを見る →という公示制度があり、民法177条が別に用意されているためです。
民法186条1項との関係
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
③の平穏・公然と、④の善意は、民法186条1項が推定してくれる。じゃが無過失は推定の一覧に入っておらぬ。ここは民法162条2項と同じ悩みどころじゃな。もっとも動産では、民法188条が「占有者が行使する権利は適法に有するものと推定する」と定めておる。売主が占有しておったことを信じたのなら、過失を問われにくい、という関係にはあるのう。
判例
最判昭和57年9月7日(民集第36巻8号1527頁)
判示事項は「荷渡指図書に基づき倉庫業者の寄託者台張上の寄託者名義が変更され寄託の目的物の譲受人が指図による占有移転を受けた場合と民法一九二条の適用」です。裁判要旨は次のとおりです。
寄託者が倉庫業者に対して発行した荷渡指図書に基づき倉庫業者が寄託者台帳上の寄託者名義を変更して右寄託の目的物の譲受人が指図による占有移転を受けた場合には、民法一九二条の適用がある。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
指図による占有移転指図による占有移転代理人に物を占有させている本人が、以後第三者のために占有するよう命じ、その第三者が承諾することで、第三者が占有権を取得すること(民法184条)。用語ページを見る →でも即時取得できるんだ!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨は、この事案の類型について「適用がある」と述べておる。荷渡指図書に基づいて寄託者台帳の名義が変更された、という具体的な事実関係つきじゃ。要旨の事実を落として一般化してはならぬぞ。
最判昭和47年11月21日(民集第26巻9号1657頁)
判示事項は「即時取得と法人の善意・無過失」です。裁判要旨は次のとおりです。
法人における民法一九二条の善意・無過失は、その法人の代表者について決するが、代理人が取引行為をしたときは、その代理人について決すべきである。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
参照法条に民法101条が並んでおるのが目印じゃ。実際に取引をした者を見る——代理のところで学んだ考え方が、そのまま即時取得に持ち込まれておるのう。
資格別の演習
不動産についても、取引行為によって平穏かつ公然と占有を始めた者が善意無過失であれば、即時取得が認められる。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法192条は「動産の占有を始めた者」と定めており、不動産は対象外です。不動産の物権変動については民法177条が登記を対抗要件としています。
相続によって動産の占有を始めた者は、善意無過失であれば即時取得により所有権を取得する。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法192条は「取引行為によって」占有を始めたことを要件としています。相続による占有の取得はこれにあたりません。
判例によれば、法人における民法192条の善意・無過失は、その法人の代表者について決するが、代理人が取引行為をしたときはその代理人について決すべきである。
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解答:◯
正しい記述です。最判昭和47年11月21日(民集第26巻9号1657頁)の裁判要旨がそのとおり述べています。
判例によれば、寄託者が倉庫業者に対して発行した荷渡指図書に基づき倉庫業者が寄託者台帳上の寄託者名義を変更して目的物の譲受人が指図による占有移転を受けた場合には、民法192条の適用がある。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。最判昭和57年9月7日(民集第36巻8号1527頁)の裁判要旨がそのとおり述べています。