民法第191条・物権
民法第191条:占有者による損害賠償
占有物を壊してしまったとき、悪意の占有者は全部、善意の占有者は現に利益を受けている限度で賠償します。ただし所有の意思のない占有者は、善意でも全部——ただし書に注意です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
自分のものだと思って使っていた物を、うっかり壊しちゃった。返せと言われても、もう無いよ……。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
民法191条が、そのときの賠償の範囲を定めておる。善意か悪意かで大きく変わるうえ、ただし書がもうひとつ罠を置いておるぞ。
条文の内容
占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。
まず、共通の前提があります。
| 前提 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 原因 | 占有者の責めに帰すべき事由による |
| 事実 | 滅失または損傷 |
| 相手方 | 回復者 |
そのうえで、賠償の範囲が3つに分かれます。
| 占有者 | 賠償の範囲 |
|---|---|
| 悪意悪意ある特定の事情や事実を『知っている』こと。いじわるな心という意味ではありません。用語ページを見る →の占有者 | 損害の全部 |
| 善意善意ある特定の事情や事実を『知らない』こと。道徳的な善悪とは関係ありません。用語ページを見る →の占有者 | 現に利益を受けている限度 |
| 所有の意思のない占有者 | 善意であっても全部 |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
善意なら「現に利益を受けている限度」でいいんだ。現存利益現存利益受け取ったもののうち、返還を求められた時点で現に手元に残っている利益のこと。意思能力を欠いていた者や制限行為能力者は、この限度で返せば足ります(民法121条の2第3項)。用語ページを見る →って、制限行為能力者のところでも出てきたね(民法121条の2)。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よう覚えておったのう。自分のものと信じて使っておった者に、全額を負わせるのは酷じゃからな。
じゃが、ただし書を見よ。他主占有他主占有所有の意思のない占有のこと。賃借人や受寄者のように、返すべき物として持っている場合が典型です。民法185条の要件を満たさない限り性質は変わりません。用語ページを見る →の者は、善意でも全部じゃ。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
どうして? 同じ善意なのに。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
「所有の意思のない占有者」は、いずれ返すべき物として持っておる者じゃ。借主や受寄者じゃな。返す前提で預かっておるのじゃから、壊したときに「使ってしもうたぶんだけ」で済ませるわけにはいくまい。条文が善意・悪意の軸とは別の軸を持ち込んでおるのが、この条文の面白いところじゃ。
民法189条・190条との並び
| 条文 | テーマ |
|---|---|
| 民法189条 | 善意の占有者と果実 |
| 民法190条 | 悪意の占有者と果実 |
| 民法191条 | 占有物の滅失・損傷と損害賠償 |
| 民法196条 | 占有者が支出した費用の償還 |
資格別の演習
占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失した場合、悪意の占有者は回復者に対し損害の全部を賠償する義務を負う。
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解答:◯
正しい記述です。民法191条本文がそのとおり定めています。
善意の占有者は、占有物を滅失させた場合であっても、常に現に利益を受けている限度でのみ賠償すれば足りる。
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解答:×
誤りです。民法191条ただし書は「所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない」としています。賃借人や受寄者のような他主占有者には当てはまりません。
民法191条による賠償義務が生じるのは、占有物の滅失又は損傷が占有者の責めに帰すべき事由による場合である。
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解答:◯
正しい記述です。条文は「占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは」と、この要件を明示しています。