民法第98条の2・総則
民法第98条の2:意思表示の受領能力
意思表示を受けた時に意思能力がなかった者や、未成年者・成年被後見人には、その意思表示を対抗できません。ただし法定代理人などが知った後は対抗できます。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
民法97条で「到達したら効く」って決まったよね。でも、届いた先の人が幼い子どもだったら? 届いたからそれでおしまい、でいいの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこを手当てしておるのが民法98条の2じゃ。受け止める力があってこその到達でな。届いただけでは押し通せぬ場合を定めておる。
条文の内容
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後は、この限りでない。 一 相手方の法定代理人 二 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方
本文:対抗できない場合
| 相手方が、受けた時に | 効果 |
|---|---|
| 意思能力意思能力自分のした行為がどんな結果を生むかを判断できる能力のこと。これを欠いた状態でした法律行為は無効です(民法3条の2)。用語ページを見る →を有しなかった | その意思表示をもって対抗することができない |
| 未成年者未成年者18歳に達していない人のこと(民法4条の反対解釈)。法律行為をするには、原則として法定代理人の同意が必要です。用語ページを見る →であった | 同上 |
| 成年被後見人成年被後見人後見開始の審判を受けた人のこと(民法8条)。その法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除いて取り消すことができます。用語ページを見る →であった | 同上 |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
被保佐人被保佐人事理を弁識する能力が著しく不十分だとして、保佐開始の審判を受けた人(民法12条)。民法13条1項が列挙する重要な行為をするには、保佐人の同意が必要です。用語ページを見る →や被補助人被補助人事理を弁識する能力が不十分だとして、補助開始の審判を受けた人(民法16条)。同意が必要になるのは、審判で個別に定められた特定の法律行為だけです。用語ページを見る →は出てこないんだね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よう見つけたのう。条文が挙げておるのは意思能力を有しなかった者・未成年者・成年被後見人の3つだけじゃ。被保佐人と被補助人は書かれておらぬ。制限行為能力者制限行為能力者未成年者・成年被後見人・被保佐人・民法17条1項の審判を受けた被補助人の4者をまとめた呼び名(民法13条1項10号)。用語ページを見る →をひとまとめにして覚えておると、ここで足をすくわれるぞ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
なお条文は「無効」とも「取り消せる」とも言うておらぬ。対抗することができないという書き方じゃ。意思表示そのものを消してしまうのではなく、その相手方に対して押し通せぬ、という組み立てじゃな。
ただし書:知った後は対抗できる
| 号 | その意思表示を知った者 |
|---|---|
| 一号 | 相手方の法定代理人法定代理人本人が選んだのではなく、法律の規定によって代理権を与えられた人のこと。未成年者の親権者や成年後見人がこれにあたります。用語ページを見る → |
| 二号 | 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方 |
これらの者がその意思表示を知った後は、対抗できます。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「知った後」であって、「知らせた後」じゃないんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文の言葉はそうなっておる。受け止められる立場の者が、現に知った——そこが分かれ目じゃ。守るために止めておいた効力を、受け止められるようになった時点で解き放つ。よくできた仕組みじゃな。
送る側と受ける側を並べる
| 条文 | 誰の側の問題か | 内容 |
|---|---|---|
| 民法97条1項 | 送る側 | 通知が到達した時から効力を生ずる |
| 民法97条3項 | 送る側 | 発した後に表意者が死亡・意思能力喪失・行為能力の制限を受けても効力を妨げられない |
| 民法98条の2 | 受ける側 | 受けた時に意思能力が無い・未成年者・成年被後見人なら対抗できない |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
97条3項と98条の2を並べてみるがよい。表意者の側に事情が生じても効力は続くが、相手方の側に事情があると対抗できぬ。守られておるのは、いずれも受け取る側の理解じゃ。到達主義という建て付けの、裏側の配慮じゃな。
行為能力の制度とのつながり
民法3条の2は、意思表示をした側について「意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」と定めています。民法98条の2は、意思表示を受けた側の話です。
| する側 | 受ける側 | |
|---|---|---|
| 条文 | 民法3条の2 | 民法98条の2 |
| 基準時 | 意思表示をした時 | 意思表示を受けた時 |
| 効果 | その法律行為は無効 | その意思表示をもって対抗できない |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
同じ「意思能力がない」でも、する側と受ける側で効果が違うんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そうじゃ。自分から結んだ約束を無かったことにするのと、送りつけられた通知を押し返すのとでは、必要な手当てが違う。条文が別々に置かれておる意味は、そこにあるのじゃよ。
資格別の演習
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法98条の2本文がそのとおり定めています。ただし書により、相手方の法定代理人法定代理人本人が選んだのではなく、法律の規定によって代理権を与えられた人のこと。未成年者の親権者や成年後見人がこれにあたります。用語ページを見る →又は行為能力者となった相手方がその意思表示を知った後は、対抗することができます。
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に被保佐人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法98条の2本文が挙げているのは、受けた時に意思能力を有しなかったとき、又は未成年者若しくは成年被後見人であったときの3つです。被保佐人被保佐人事理を弁識する能力が著しく不十分だとして、保佐開始の審判を受けた人(民法12条)。民法13条1項が列挙する重要な行為をするには、保佐人の同意が必要です。用語ページを見る →や被補助人被補助人事理を弁識する能力が不十分だとして、補助開始の審判を受けた人(民法16条)。同意が必要になるのは、審判で個別に定められた特定の法律行為だけです。用語ページを見る →は含まれていません。
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に成年被後見人であった場合でも、その相手方の法定代理人がその意思表示を知った後は、その意思表示をもって相手方に対抗することができる。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法98条の2ただし書一号は、相手方の法定代理人法定代理人本人が選んだのではなく、法律の規定によって代理権を与えられた人のこと。未成年者の親権者や成年後見人がこれにあたります。用語ページを見る →がその意思表示を知った後は本文の適用がないとしています。同ただし書二号は、意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方についても同様に定めています。