民法第37条・総則
民法第37条:外国法人の登記
認許された外国法人が日本に事務所を設けたときの登記を、8つの項にわたって定めます。登記事項・期間・対抗力・成立の否認・移転・過料まで、民法に残る唯一の詳細な登記規定です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
民法36条は「登記をするものとする」だけだったよね。中身はどこに書いてあるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
すぐ隣じゃ。民法37条が、外国法人外国法人外国の法律によって成立した法人。日本では、国・国の行政区画・外国会社を除き、原則としてその成立が認許されません(民法35条1項)。用語ページを見る →について8項にわたって細かく定めておる。第三章に残された条文の中では、群を抜いて具体的でな。民法38条から84条までが削除された今、ここだけが登記の実務を書き残しておるのじゃ。
1項:登記すべき事項
外国法人(第三十五条第一項ただし書に規定する外国法人に限る。以下この条において同じ。)が日本に事務所を設けたときは、三週間以内に、その事務所の所在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。
まず、対象が括弧書きで絞られています。民法35条1項ただし書に規定する外国法人——つまり、法律又は条約の規定により認許認許外国法人の成立を、日本の法律上も認めること(民法35条1項)。認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有します(同条2項)。用語ページを見る →された外国法人に限られます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 民法35条1項ただし書の外国法人 |
| きっかけ | 日本に事務所を設けたとき |
| 期間 | 三週間以内 |
| 場所 | その事務所の所在地 |
登記すべき事項は、次の6つです。
| 号 | 登記事項 |
|---|---|
| 一 | 外国法人の設立の準拠法 |
| 二 | 目的 |
| 三 | 名称 |
| 四 | 事務所の所在場所 |
| 五 | 存続期間を定めたときは、その定め |
| 六 | 代表者の氏名及び住所 |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
一号の「設立の準拠法」が外国法人らしいね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこじゃ。どの国の法律によって生まれた法人なのか——これが分からねば、その法人の姿を測りようがない。内国の法人には要らぬ項目じゃからのう。
二号の「目的」も忘れてはならぬ。民法34条が目的の範囲目的の範囲法人が権利を持ち義務を負うことのできる枠のこと。定款その他の基本約款で定められた目的によって画されます(民法34条)。用語ページを見る →で権利能力を画しておるのじゃから、目的が公示されることには意味があるのじゃ。
2項:変更の登記と対抗力
前項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、三週間以内に、変更の登記をしなければならない。この場合において、登記前にあっては、その変更をもって第三者に対抗することができない。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| きっかけ | 1項各号の事項に変更が生じたとき |
| 期間 | 三週間以内 |
| 後段 | 登記前は、その変更をもって第三者第三者契約の当事者以外の人のこと。民法177条では「登記がないことを主張する正当な利益を有する者」に限られます。用語ページを見る →に対抗することができない |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「対抗することができない」って、民法177条で出てきた言葉だ!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よう覚えておったのう。考え方も同じじゃ。外から見えるようにしておかねば、第三者に主張できぬ。代表者が交代したのに登記していなければ、それを知らずに前の代表者と取引した相手に「あれは無権限だ」とは言えぬ、という向きじゃな。対抗要件対抗要件当事者間で成立した権利関係を、第三者に対して『自分が権利者だ』と主張するために必要な要件(不動産における登記など)。用語ページを見る →の発想がここにも顔を出しておる。
3項:職務執行停止等の仮処分
代表者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その登記をしなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。
代表者の職務執行を停止する仮処分などがされたときも登記が必要で、後段により2項後段(登記前は第三者に対抗できない)が準用されます。
4項:外国で登記事項が生じたとき
前二項の規定により登記すべき事項が外国において生じたときは、登記の期間は、その通知が到達した日から起算する。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
外国で起きたことを、日本にいる者がその日のうちに知るのは無理じゃろう。じゃから起算点を通知が到達した日にずらしておる。三週間という期間を守れるようにする、実務的な配慮じゃな。
5項:登記するまでは成立を否認できる
外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登記するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 場面 | 初めて日本に事務所を設けたとき |
| 登記するまで | 第三者は、その法人の成立を否認することができる |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
法人の存在そのものを認めなくていいの!? 強烈だね……。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
強い規定じゃ。しかも「否認することができる」という書き方でな。第三者の側が選べるのじゃ。登記が無いのに法人として扱えと迫られる筋合いはない、ということじゃな。登記を促す圧力としては、これ以上ないほど効くじゃろう。
6項・7項:事務所の移転
6項 外国法人が事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に第一項各号に掲げる事項を登記しなければならない。
7項 同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記すれば足りる。
| 場面 | 旧所在地 | 新所在地 |
|---|---|---|
| 事務所の移転(6項) | 三週間以内に移転の登記 | 四週間以内に1項各号の事項を登記 |
| 同一の登記所の管轄区域内での移転(7項) | その移転を登記すれば足りる | — |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
旧が三週間、新が四週間——数字が違うところは狙われやすいぞ。7項は、同じ登記所の中で動いただけなら移転の登記だけでよいという簡略化じゃ。同じ帳簿の中の話じゃからのう。
8項:過料
外国法人の代表者が、この条に規定する登記を怠ったときは、五十万円以下の過料に処する。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
罰があるんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
科されるのは外国法人の代表者じゃ。法人ではなく、代表者個人に向けられておる。登記は誰かが動かねば実現せぬからのう。
8つの項を一覧にする
| 項 | 内容 | 期間・数字 |
|---|---|---|
| 1項 | 日本に事務所を設けたときの登記(6つの事項) | 三週間以内 |
| 2項 | 変更の登記。登記前は第三者に対抗できない | 三週間以内 |
| 3項 | 職務執行停止等の仮処分の登記(2項後段を準用) | — |
| 4項 | 登記事項が外国で生じたときの起算点 | 通知が到達した日から |
| 5項 | 初めて事務所を設けたとき、登記までは第三者が成立を否認できる | — |
| 6項 | 事務所の移転 | 旧所在地は三週間以内/新所在地は四週間以内 |
| 7項 | 同一の登記所の管轄区域内での移転 | 移転の登記で足りる |
| 8項 | 登記を怠った代表者への過料 | 五十万円以下 |
資格別の演習
民法37条1項の登記義務は、日本に事務所を設けたすべての外国法人に及ぶ。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法37条1項の括弧書きは、対象を「第三十五条第一項ただし書に規定する外国法人に限る」としています。すなわち、法律又は条約の規定により認許された外国法人に限られます。
外国法人が事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に民法37条1項各号に掲げる事項を登記しなければならない。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法37条6項がそのとおり定めています。ただし同条7項により、同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記すれば足ります。
外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登記するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法37条5項がそのとおり定めています。同条2項後段が「登記前にあっては、その変更をもって第三者に対抗することができない」として変更の効力を制限するのに対し、5項は法人の成立そのものを否認できるとする、より強い規定です。
民法37条に規定する登記を怠ったときは、その外国法人が五十万円以下の過料に処せられる。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法37条8項は「外国法人の代表者が、この条に規定する登記を怠ったときは、五十万円以下の過料に処する」と定めており、過料の対象は法人ではなく代表者です。