民法第22条・総則

民法第22条:住所

住所とは「生活の本拠」である、とだけ定めた一文の条文です。届出や住民票ではなく、実際の生活の実態から決まる点を、最高裁の事例が具体的に示しています。

  • 宅建
  • 行政書士
  • 司法書士
  • 司法試験

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

住所って、住民票に書いてある場所のことでしょ? わざわざ民法に書くようなことなの?

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

それが違うのじゃよ。民法22条はたった一文で「生活の本拠」と言い切っておる。住民票に何と書いてあるかではなく、実際にどこで暮らしておるかで決まるのじゃ。

条文の内容

各人の生活の本拠をその者の住所とする。

条文が置いているのは、住所の定義だけです。届出をした場所とも、住民票の記載とも書いていません。

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

「本拠」って、拠点ってこと?

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

そう読んでよい。寝るところ、働くところ、家族のおるところ——そうした暮らしの中心じゃな。条文はそれ以上細かく決めておらん。だから事例ごとの判断になる。ここに判例が積み上がっておるわけじゃ。

ちなみに一人が同時にいくつも「本拠」を持てるのかどうかも、条文は書いておらん。書いていないところを勝手に埋めぬのが、条文を読む作法じゃぞ。

住所が問題になる場面

住所は民法の中だけの話ではありません。他の法律が「住所」を要件として使うとき、その意味は民法22条から借りてきます。実際、後で見る2つの最高裁判決も、参照法条に民法22条が挙げられています。

条文 住所が持つ意味
民法23条1項 住所が知れない場合には、居所居所きょしょ住所が知れない場合に、住所とみなされる場所(民法23条1項)。民法は「居所」そのものの定義を置いていません。用語ページを見る →を住所とみなす
民法24条 ある行為について仮住所仮住所かりじゅうしょある行為について当事者が選定しておく場所。その行為に関してだけ住所とみなされます(民法24条)。用語ページを見る →を選定すれば、その行為に関しては仮住所を住所とみなす
民法25条1項 従来の住所又は居所を去った者を不在者不在者ふざいしゃ従来の住所又は居所を去った者のこと(民法25条1項)。生死が明らかでないことまでは、この語の要件になっていません。用語ページを見る →とし、財産管理の対象とする
民法484条1項 弁済の場所について別段の意思表示がないとき、特定物の引渡し以外の弁済は債権者の現在の住所でする

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

住所が決まらねば、どこへ払えばよいかも決まらん。地味に見えて、あちこちの土台になっておる条文なのじゃ。

判例:どこが「生活の本拠」か

最判平成23年2月18日(集民第236号71頁)

香港に赴任していた人が国外財産の贈与を受けた際、贈与税の課税要件である「国内における住所」があったかが争われた事件です。判示事項は「香港に赴任しつつ国内にも相応の日数滞在していた者が、国外財産の贈与を受けた時において、相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)1条の2第1号所定の贈与税の課税要件である国内(同法の施行地)における住所を有していたとはいえないとされた事例」です。

裁判要旨が挙げる事実関係は、次のようなものでした。

  • 贈与を受けたのは赴任の開始から約2年半後
  • 通算約3年半の赴任期間中、約3分の2の日数を香港の居宅に滞在し、その間に現地での業務に従事
  • 期間中の約4分の1の日数を国内の居宅に滞在し、その間に国内での業務に従事
  • 贈与税回避の目的の下に、国内での滞在日数が多くなりすぎないよう調整していた

そのうえで裁判要旨は、これらの事実関係の下では、贈与を受けた時において国内に住所を有していたということはできない、と結論づけています(補足意見があります)。

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

えっ、税金を避ける目的で日数を調整してたのに、それでも住所は香港なの?

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

裁判要旨は「贈与税回避の目的の下に……調整していたとしても」と、その事情を踏まえたうえでなお国内の住所を認めなかった。滞在日数と現地業務という外から見える暮らしの実態を重く見た、と読めるのう。

最判平成20年10月3日(集民第229号1頁)

都市公園内に不法に設置されたキャンプ用テントを起居の場所としていた人が、そのテントの所在地への転居届の不受理を争った事件です。判示事項は「都市公園内に不法に設置されたテントを起居の場所としている者につき、同テントの所在地に住所を有するものとはいえないとされた事例」です。

裁判要旨は次のとおりです。

Xが、都市公園法に違反して、都市公園内に不法に設置されたキャンプ用テントを起居の場所とし、公園施設である水道設備等を利用して日常生活を営んでいるなど原判示の事実関係の下においては、Xは、上記テントの所在地に住所を有するものとはいえない。

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

こっちは、実際にそこで寝起きしてるのに住所じゃないんだ……。さっきの判例と逆向きに感じる。

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

だからこそ二つ並べたのじゃ。寝起きしていれば住所、というほど単純ではない。この事件では、都市公園法に違反して不法に設置されたテントであるという事情が、要旨にはっきり書き込まれておる。事案の事情を抜きに「テントは住所にならぬ」と一般化してはならぬぞ。

判例 争点 結論
最判平成23年2月18日 香港赴任者に国内の住所があるか 国内の住所を有していたとはいえない
最判平成20年10月3日 公園内の不法設置テントの所在地が住所か その所在地に住所を有するものとはいえない

資格別の演習

宅建正誤問題AI生成類題

民法上、各人の住所は、住民票に記載された場所とされる。

解答・解説を見る

解答:×

誤りです。民法22条は「各人の生活の本拠をその者の住所とする」と定めており、住民票の記載を基準とはしていません。住所は暮らしの実態から判断されます。

行政書士正誤問題AI生成類題

民法は、住所を「生活の本拠」と定義しているにとどまり、住所の個数や認定の基準について明文を置いていない。

解答・解説を見る

解答:

正しい記述です。民法22条は「各人の生活の本拠をその者の住所とする」という一文のみで、それ以上の基準を定めていません。そのため、具体的にどこが生活の本拠かは事案ごとの判断となり、最判平成23年2月18日や最判平成20年10月3日のような事例判断が積み重ねられています。

司法書士正誤問題AI生成類題

判例によれば、都市公園法に違反して都市公園内に不法に設置されたキャンプ用テントを起居の場所とし、公園施設である水道設備等を利用して日常生活を営んでいた者について、当該テントの所在地に住所を有するものとはいえない。

解答・解説を見る

解答:

正しい記述です。最判平成20年10月3日(集民第229号1頁)の裁判要旨がそのとおり述べています。同判決の参照法条には民法22条が挙げられており、住民基本台帳法上の「住所」の解釈にも民法22条の定義が用いられていることが分かります。

司法試験正誤問題AI生成類題

判例によれば、贈与税回避の目的で国内における滞在日数が多くなりすぎないよう調整していた者については、その調整の事実だけで国内に住所を有していたと認められる。

解答・解説を見る

解答:×

誤りです。最判平成23年2月18日(集民第236号71頁)の裁判要旨は、贈与税回避の目的の下に国内での滞在日数が多くなりすぎないよう調整していたとしても、判示の事実関係の下では贈与を受けた時に国内に住所を有していたということはできない、としています。目的の存在だけで結論が決まるという判示ではありません。

一次情報を確認する