民法第400条・債権
民法第400条:特定物の引渡しの場合の注意義務
特定物を引き渡すまで、善良な管理者の注意をもって保存しなければなりません。基準は契約と社会通念です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
中古の家を買って、引渡しまでのあいだに売主が壊しちゃったら?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこを定めるのが民法400条じゃ。善良な管理者の注意善良な管理者の注意その立場の人に通常求められる程度の注意のこと。共有物を使用する共有者や各種の管理人が負う注意義務の基準です(民法249条3項・264条の5第1項など)。用語ページを見る →——債権法でくり返し出てくる言葉が、ここで登場するぞ。
条文の内容
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
| 要素 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 場面 | 債権の目的が**特定物特定物当事者がその物の個性に着目して指定した物のこと。中古の一軒家や絵画など、代わりのきかない物です。引渡しまで善良な管理者の注意をもって保存する義務が生じます(民法400条)。用語ページを見る →の引渡し**であるとき |
| いつまで | その引渡しをするまで |
| 基準 | 契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意 |
| 何を | その物を保存しなければならない |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「契約その他の……社会通念に照らして定まる」が長い!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこが平成29年改正で加わった部分じゃ。善管注意義務の中身は、契約と取引通念から決まると明示しておる。
同じ「善良な管理者の注意」でも、何を、どういう約束で預かったかで求められる中身は変わる。一律の物差しではない、ということじゃな。
保管義務に反しないとされた事例
賃借家屋の無断改造工事について、最高裁は次のように判断しました。
賃借人が賃借家屋の無断改造工事をした場合でも、それが容易に復元できる簡易なものであり、もしくは浸水を防止するため必要であつた等、原判示の事情(原判決理由参照)がある場合には賃貸借の目的物保管義務に違反しないものと解すべきである。 (最判昭和40年3月11日・集民第78号267頁)
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
無断で改造しても、義務違反にならないことがあるんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨は「容易に復元できる簡易なものであり、もしくは浸水を防止するため必要であつた等」の事情がある場合、と限っておる。事情次第ということじゃ。
もうひとつ、敷地の利用について判断した例もあるぞ。
家屋賃借人がその敷地に家屋を無断築造した場合であつても、現在の家主が賃貸人となつた当時、すでに右賃借人が地主の承諾をえて敷地の一部に約三坪の居宅兼物置を築造しており、その後約一二年をへて、右賃借人が右居宅兼物置を撤去した跡にそれと面積、位置をほぼ同じくして、木造トタン葺板壁の簡単な構造の作業場を新築したにすぎず、右新築による賃借家屋の損傷の程度や作業場の利用状況等が判示のとおりであるときには、右作業場の設置をもつて、家屋賃借人の敷地利用が賃借家屋およびその敷地の使用収益権の範囲を逸脱し、その保管義務に反するものということはできない。 (最判昭和46年7月1日・集民第103号335頁)
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
こちらも事案の細部を積み上げて結論に至っておる。面積、位置、構造、損傷の程度、利用状況——要旨が並べるこれらが判断の材料じゃ。
善管注意義務に反するかは、事情の総体で決まる。400条が「契約その他の……社会通念に照らして」と書いた意味が、判例からも見えてくるのう。
民法413条1項との関係
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
400条の善管注意義務は、軽くなることがある。
民法413条1項——債権者が受領を拒み、又は受けることができないとき、債務者は履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって保存すれば足りる。
受領遅滞受領遅滞債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないこと。債務者の保存義務が軽減され、増加費用は債権者の負担となります(民法413条)。用語ページを見る →があれば、注意義務の水準が下がるというわけじゃな。
資格別の演習
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者はその引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法400条がそのとおり定めています。
民法400条の善良な管理者の注意の内容は、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法400条がそのとおり定めています。
賃借人が賃借家屋の無断改造工事をした場合でも、それが容易に復元できる簡易なものであるなどの事情がある場合には、賃貸借の目的物保管義務に違反しない。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。最判昭和40年3月11日(集民第78号267頁)の裁判要旨がそのとおり判示しています。
一次情報を確認する
- e-Gov法令検索:民法第400条
- 最判昭和40年3月11日(集民 第78号267頁)(昭和39(オ)1310)
- 最判昭和46年7月1日(集民 第103号335頁)(昭和44(オ)508)