民法第188条・物権
民法第188条:占有物について行使する権利の適法の推定
占有していれば、その権利は適法に持っているものと推定されます。「持っている人が正しい」という強力な推定と、それが覆される場面を判例で確かめます。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「その時計、わたしのだよ」って言われたら、持っているほうが証明しないといけないの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
いや、逆じゃ。民法188条は持っておる側の味方をする。ここから第二節「占有権の効力」が始まるぞ。
条文の内容
占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。
| 要素 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 誰が | 占有者 |
| 何について | 占有物について行使する権利 |
| 効果 | 適法に有するものと推定する |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「行使する権利」って、所有権のこと?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文は権利の種類を限っておらぬ。所有者として使っておれば所有権が、借主として使っておれば賃借権が——現に行使しておる権利が推定の対象になる、と読める。
効き目は大きいぞ。争う側が「その権利は無い」と証明せねばならぬのじゃからな。民法192条の即時取得即時取得取引行為によって平穏・公然と動産の占有を始めた者が、善意無過失であれば即時にその動産の権利を取得すること(民法192条)。無権利者から買っても保護される制度です。用語ページを見る →が「取引行為によって」動産の占有を始めた者を守るのも、この推定と地続きの発想じゃ。
判例:推定はどこまで効くか
最判昭和38年10月15日(民集第17巻11号1497頁)
判示事項は「登記簿上の現所有者名義人が前所有名義人から不動産所有権を取得したと主張する場合現所有名義人は登記の推定力を援用しうるか」です。裁判要旨は次のとおりです。
登記簿上の現所有者名義人は、前所有名義人から不動産所有権を取得したと主張する場合には、前所有名義人に対し、登記の推定力を援用し得ない。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
自分に名義があるのに、前の名義人には推定を使えないの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨はそう述べておる。**「前所有名義人に対し」**という限定つきじゃ。相手が「もともと自分のものだった」と言える立場にあるときは、推定に頼れぬ、という筋道じゃな。
推定は万能ではない——次の判例は、それがはっきり覆された事例じゃ。
最判昭和38年7月4日(集民第67号7頁)
判示事項は「民法第一八八条の推定が覆えされたとされた事例」です。裁判要旨は次のとおりです。
不動産所有権の帰属を争う甲乙のうち該不動産を占有する甲が民法第一八八条により一応所有権者と推定される場合においても、該不動産は、乙の先代が他からこれを買い受けて所有権保存登記を了し、次いで乙が家督相続により右所有権を承継した事実が証明されたときは、(他に、乙の先代または乙が所有権を喪失した事由がない限り)前記推定は覆えされたものというべきである。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨の言葉に注目じゃ。「一応所有権者と推定される」——それが、相手方の権利取得の経緯が証明されたことで覆っておる。推定推定一応そうであるものとして扱い、争う側に反対の証明を求めること。「みなす」と違い、反証があれば覆ります。用語ページを見る →とは、そういう強さのものじゃ。
資格別の演習
占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定される。
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解答:◯
正しい記述です。民法188条がそのとおり定めています。推定される権利は所有権に限られず、現に行使している権利が対象となります。
判例によれば、登記簿上の現所有者名義人は、前所有名義人から不動産所有権を取得したと主張する場合にも、前所有名義人に対して登記の推定力を援用することができる。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。最判昭和38年10月15日(民集第17巻11号1497頁)の裁判要旨は、この場合に「登記の推定力を援用し得ない」としています。
判例によれば、民法188条により一応所有権者と推定される占有者がいる場合でも、相手方の先代が買い受けて所有権保存登記を了し、相手方がこれを承継した事実が証明されたときは、その推定は覆される。
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解答:◯
正しい記述です。最判昭和38年7月4日(集民第67号7頁)の裁判要旨がそのとおり述べています(他に所有権を喪失した事由がない限り、という留保が付されています)。