民法第187条・物権
民法第187条:占有の承継
前の人の占有を「足す」か「足さない」かを、承継人が選べます。ただし足すなら瑕疵も一緒についてくる——取得時効の期間計算で決定的に効く条文です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
おじいちゃんが15年占有していた土地を相続したの。わたしはあと5年待てば時効取得できる? それともゼロからやり直し?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
民法187条が「選んでよい」と答えておる。しかも選択には条件がついておってな。そこが面白いところじゃ。
1項:どちらでも選べる
占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| ① 自己の占有のみ | 自分が占有を始めた時から数える |
| ② 前の占有者の占有を併せて | 前の人の占有期間を足して数える |
条文は「その選択に従い」と書いています。承継人承継人前の人の地位や権利を受け継いだ人のこと。相続のようにまとめて承継する包括承継人と、売買のように個別に承継する特定承継人があります。用語ページを見る →の側が選べる、というのが1項の内容です。
2項:足すなら瑕疵も一緒に
前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「瑕疵瑕疵きず・欠点のこと。占有では、悪意・過失・強暴・隠秘といった、占有者に不利に働く事情を指します(民法187条2項)。用語ページを見る →」? きずのこと?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
ここでは占有者に不利に働く事情のことじゃ。悪意であったこと、過失があったこと——そういうものが付いてくる。
たとえばじゃ。前の占有者が悪意で15年、自分は善意善意ある特定の事情や事実を『知らない』こと。道徳的な善悪とは関係ありません。用語ページを見る →無過失で5年占有したとしよう。足せば20年で民法162条1項の要件を満たす。じゃが「10年でよい」という162条2項を使おうとして足せば、悪意という瑕疵も承継してしまう。いいとこ取りはできぬのじゃよ。
| 主張の仕方 | 期間 | 主観 |
|---|---|---|
| 自己の占有のみ | 5年 | 善意無過失 |
| 併せて主張 | 20年 | 前占有者の瑕疵を承継する |
判例:法人格の取得と187条1項
最判平成元年12月22日(集民第158号845頁)
判示事項は「権利能力なき社団等が法人格を取得した場合と民法一八七条一項」です。裁判要旨は次のとおりです。
民法一八七条一項は、権利能力なき社団等の占有する不動産を法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用がある。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
法人になる前と後で、占有をつなげられるんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨が述べておるのは「適用がある」という点までじゃ。適用があるということは、その法人も1項の選択ができ、併せて主張するなら2項により瑕疵も承継する、という枠組みに乗るということじゃな。
資格別の演習
占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張することも、前の占有者の占有を併せて主張することもできる。
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解答:◯
正しい記述です。民法187条1項がそのとおり定めています。
前の占有者の占有を併せて主張する場合であっても、前の占有者に悪意という瑕疵があったことは承継人に影響しない。
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解答:×
誤りです。民法187条2項は「その瑕疵をも承継する」と定めています。期間だけを取り込んで瑕疵を切り離すことはできません。
判例によれば、民法187条1項は、権利能力なき社団等の占有する不動産を、法人格を取得した以後に当該法人が引き継いで占有している場合にも適用がある。
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解答:◯
正しい記述です。最判平成元年12月22日(集民第158号845頁)の裁判要旨がそのとおり述べています。
善意無過失で5年間占有した者が、悪意で15年間占有していた前占有者の占有を併せて主張する場合、その主張は民法162条2項の10年の取得時効の要件を満たすものとはならない。
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解答:◯
正しい記述です。民法187条2項により前占有者の瑕疵を承継するため、併せて主張する以上は悪意という瑕疵を引き受けることになります。この場合は民法162条1項の20年の取得時効として主張することになります。