民法第180条・物権
民法第180条:占有権の取得
占有権は「自己のためにする意思をもって物を所持する」ことで取得します。持つ権利があるかどうかを問わずに、持っているという事実そのものを守る——第二章「占有権」の入口です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「占有権」って、物を持っていいという権利のこと?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこが最大のつまずきどころじゃ。占有権占有権自己のためにする意思をもって物を所持することで取得する物権(民法180条)。その物を持ってよい権利(本権)があるかどうかとは切り離して保護されます。用語ページを見る →は**「持ってよいか」を問わぬ**権利でな。持ってよい根拠のほうは本権本権所有権や賃借権のように、その物を占有することを法律上正当づける権利のこと。占有権が「事実」を守るのに対し、本権は「権利」そのものです。用語ページを見る →と呼んで、きっぱり分けて考えるのじゃよ。
条文の内容
占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。
| 要件 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 主観 | 自己のためにする意思 |
| 客観 | 物を所持すること |
| 効果 | 占有権を取得する |
条文が挙げているのはこの2つだけです。「その物を持つ権利があること」は、要件に入っていません。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
えっ。じゃあ、盗んできた物でも占有権はあるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文の文言からは、そう読める。所持という事実さえあれば占有権は成立する。じゃからこそ、力ずくの奪い合いを法が止められるのじゃ。「所有者だと思うなら、奪い返すのではなく訴えなさい」——それが民法200条の占有回収の訴え占有回収の訴え占有を奪われたときに、物の返還と損害の賠償を請求する訴え(民法200条1項)。占有を奪われた時から1年以内に提起しなければなりません(民法201条3項)。用語ページを見る →じゃ。占有権は、自力救済を封じるための仕組みでもあるのじゃよ。
占有権と本権
| 占有権 | 本権 | |
|---|---|---|
| 守るもの | 所持所持物を事実上支配している状態のこと。占有権は、自己のためにする意思をもってこの所持をすることで取得されます(民法180条)。用語ページを見る →という事実 | 所有権・賃借権などの権利 |
| 根拠条文 | 民法180条以下 | 民法206条(所有権)など |
| 訴え | 占有の訴え占有の訴え占有を妨害されたときなどに、占有それ自体を根拠として救済を求める訴え(民法197条〜202条)。保持・保全・回収の3種類があります。用語ページを見る →(民法197条〜) | 本権の訴え本権の訴え所有権などの本権を根拠として物の返還等を求める訴え。占有の訴えとは互いに妨げず、占有の訴えについて本権に関する理由で裁判することはできません(民法202条)。用語ページを見る → |
この2つが互いを妨げないことは、民法202条1項が明言しています。
「自己のためにする意思」
条文はもう一つ、主観的な要件を置いています。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「自己のためにする意思」って、「所有の意思」とは違うの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
違う言葉じゃから、違う内容と読むのが筋じゃ。所有の意思所有の意思その物を自分のものとして持つ意思のこと。民法162条の取得時効の要件であり、所有権以外の財産権については「自己のためにする意思」とされます(民法163条)。用語ページを見る →は民法162条の取得時効の要件でな、「自分のものとして持つ」意思じゃ。民法180条の「自己のためにする意思」は、そこまで求めておらぬ。
借りている物でも「自分のために」持っておることに変わりはなかろう。借主にも占有権はある——条文の言葉の差が、そのまま結論の差になるのじゃよ。
占有権の取得の3つの型
第一節「占有権の取得」は、次の順で条文が並びます。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 民法180条 | 自己占有(自分で所持する) |
| 民法181条 | 代理占有代理占有他人(占有代理人)に物を所持させることで、本人が占有権を持つこと(民法181条)。賃借人に貸している間も、賃貸人は占有権を失いません。用語ページを見る →(代理人によって取得する) |
| 民法182条〜184条 | 占有権の譲渡(4つの引渡し) |
| 民法185条 | 占有の性質の変更 |
| 民法186条・187条 | 推定と承継 |
資格別の演習
占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。
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解答:◯
正しい記述です。民法180条がそのとおり定めています。要件は「自己のためにする意思」と「所持」の2つです。
民法180条によれば、占有権を取得するには、その物を占有する正当な権原を有することが必要である。
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解答:×
誤りです。民法180条は「自己のためにする意思」と「所持」のみを要件としており、権原の有無は要件とされていません。権原にあたる所有権や賃借権は、占有権とは別の「本権」として扱われます。
民法180条の「自己のためにする意思」は、民法162条の「所有の意思」と同じ意味であり、賃借人は占有権を取得しない。
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解答:×
誤りです。条文はそれぞれ別の言葉を用いています。民法180条は「自己のためにする意思」で足りるため、賃借人のように返還を予定して所持する者も占有権を取得します。