民法第120条・総則
民法第120条:取消権者
取り消せる人は条文が限定しています。行為能力の制限による取消しと、錯誤・詐欺・強迫による取消しとで、取消権者の範囲が違う点が要です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「取り消すことができる」ってよく出てくるけど、誰が取り消せるの? 誰でもいいわけじゃないよね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこを閉じておるのが民法120条じゃ。どちらの項も「〜に限り、取り消すことができる」と書いておる。列挙の外の者は取り消せぬのじゃ。
1項:行為能力の制限による取消し
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
| 取消権者 |
|---|
| 制限行為能力者制限行為能力者未成年者・成年被後見人・被保佐人・民法17条1項の審判を受けた被補助人の4者をまとめた呼び名(民法13条1項10号)。用語ページを見る →(括弧書きあり) |
| その代理人 |
| その承継人 |
| 同意をすることができる者 |
括弧書きは「他の制限行為能力者の法定代理人法定代理人本人が選んだのではなく、法律の規定によって代理権を与えられた人のこと。未成年者の親権者や成年後見人がこれにあたります。用語ページを見る →としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む」としています。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
この括弧書き、民法102条ただし書と同じ場面だ!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よう繋がったのう。102条ただし書が「取り消せる余地がある」と入口を開け、120条1項の括弧書きが「誰が取り消せるか」に本人を加えておる。条文どうしが噛み合っておるのじゃ。
2項:錯誤・詐欺・強迫による取消し
錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
| 取消権者 |
|---|
| 瑕疵ある意思表示をした者 |
| その代理人 |
| その承継人 |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
2項には「同意をすることができる者」が入ってない!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこが最大の見どころじゃ。並べてみよ。
| 取消権者 | 1項(行為能力の制限) | 2項(錯誤・詐欺・強迫) |
|---|---|---|
| 本人 | 制限行為能力者 | 瑕疵ある意思表示をした者 |
| 代理人 | ○ | ○ |
| 承継人 | ○ | ○ |
| 同意をすることができる者 | ○ | × |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
同意同意保護者が、本人のする法律行為をしてよいとあらかじめ認めること。同意を得なければならない行為を同意なくしたときは、その行為を取り消すことができます(民法5条2項・13条4項・17条4項)。用語ページを見る →をすることができる者——保佐人保佐人被保佐人に付される保護者(民法12条)。家庭裁判所が保佐開始の審判をするときに、職権で選任します(民法876条の2第1項)。用語ページを見る →や補助人補助人被補助人に付される保護者(民法16条)。家庭裁判所が補助開始の審判をするときに、職権で選任します(民法876条の7第1項)。用語ページを見る →じゃな——は、行為能力の制限による取消しにだけ登場する。錯誤錯誤意思表示の前提に勘違いがあること。民法95条1項が2種類を挙げ、その錯誤が重要なものであるときに取り消すことができます。用語ページを見る →や詐欺詐欺だまして誤った判断をさせること。詐欺による意思表示は取り消すことができます(民法96条1項)が、その取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗できません(同条3項)。用語ページを見る →は、行為能力の制度とは別の話じゃからのう。同意権者が出てくる筋合いがない。
「限り」という言葉
両項とも「〜に限り、取り消すことができる」という書き方です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
契約の相手方は取り消せないんだね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文の列挙に入っておらぬからのう。取消しは、守られる側の武器じゃ。相手方に持たせては、制度の意味が裏返ってしまう。
なお相手方には、別の道が用意されておるぞ。民法20条の催告催告相手に対して「〜してほしい」と促す通知のこと。制限行為能力者の相手方は、追認するかどうかの確答を求める催告ができます(民法20条)。用語ページを見る →権がそれじゃ。取り消させるのではなく、決着を促す——役割がきちんと分けてある。
取消権者が出てくる他の条文
| 条文 | 民法120条との関係 |
|---|---|
| 民法122条 | 取り消すことができる行為は、「第百二十条に規定する者」が追認したときは、以後取り消すことができない |
| 民法124条2項1号 | 法定代理人法定代理人本人が選んだのではなく、法律の規定によって代理権を与えられた人のこと。未成年者の親権者や成年後見人がこれにあたります。用語ページを見る →又は制限行為能力者の保佐人・補助人が追認をするとき |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
取消権を持つ者は、追認する権限も持つ。民法122条が120条を名指しで引いておるのが、その証じゃな。取り消すか、追認するか——どちらに転ばせるかを決められる立場、ということじゃ。
資格別の演習
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法120条1項がそのとおり定めています。条文が「〜に限り」としているため、列挙されていない者は取り消すことができません。
詐欺によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者、その代理人、承継人のほか、同意をすることができる者も取り消すことができる。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法120条2項が挙げているのは「瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人」の3者のみで、「同意をすることができる者」は含まれていません。同意をすることができる者が挙げられているのは、同条1項の行為能力の制限による取消しの場合です。
制限行為能力者と契約をした相手方は、民法120条1項により、その契約を取り消すことができる。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法120条1項は取消権者を限定列挙しており、契約の相手方は含まれていません。相手方には、民法20条の催告催告相手に対して「〜してほしい」と促す通知のこと。制限行為能力者の相手方は、追認するかどうかの確答を求める催告ができます(民法20条)。用語ページを見る →権が別に用意されています。