民法第116条・総則
民法第116条:無権代理行為の追認
追認は契約の時にさかのぼって効力を生じます。ただし第三者の権利を害することはできません。さかのぼるからこそ、その間に生まれた権利を守る歯止めが要ります。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
本人が追認したら、契約はいつから有効になるの? 追認した日から?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
いや、契約の時にさかのぼるのじゃ。民法116条本文がそう定めておる。追認の日からではない。ここを取り違えると、権利の順番がまるごとずれてしまうぞ。
条文の内容
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
本文:契約の時にさかのぼる
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 原則 | 契約の時にさかのぼって効力を生ずる |
| 例外 | 別段の意思表示があるとき |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「別段の意思表示がないときは」って書いてあるから、当事者が決めれば変えられるんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よう読んだのう。民法91条を思い出すがよい。公の秩序に関しない規定は、当事者の意思で動かせる。116条本文は、まさにその書きぶりをしておる。
ただし書:第三者の権利を害することはできない
ただし、第三者の権利を害することはできない。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
さかのぼるということは、その間に何かが起きていたら困るってこと?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこじゃ。契約の時から追認の時までの間に、第三者第三者契約の当事者以外の人のこと。民法177条では「登記がないことを主張する正当な利益を有する者」に限られます。用語ページを見る →が権利を取得しておることがある。さかのぼりを何の制限もなく認めれば、その第三者が後から追い落とされてしまう。
過去を書き換える力を持つ以上、書き換えの及ばぬ範囲を定めておく必要があるのじゃな。
「さかのぼる」ことの意味
| 場面 | 追認前 | 追認後(さかのぼり) |
|---|---|---|
| 本人への効果 | 生じていない(民法113条1項) | 契約の時から生じていたことになる |
| 相手方の取消権 | 行使できる(民法115条) | 追認があれば、もはや行使できない |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
追認追認取り消すことができる行為を、あとから「これでよい」と認めて、もう取り消せないものとして確定させること(民法122条)。用語ページを見る →は、宙づりの状態に過去へ向けて決着をつける。だからこそ、相手方は追認される前に動くかどうかを決めねばならぬ——115条の取消権が「本人が追認をしない間は」と限られておるのは、そのためじゃな。
判例:追認したからといって、何でも手に入るわけではない
最判平成23年10月18日(民集第65巻7号2899頁)
判示事項は「無権利者を委託者とする物の販売委託契約が締結された場合における当該物の所有者の追認の効果」です。裁判要旨は次のとおりです。
無権利者を委託者とする物の販売委託契約が締結された場合に、当該物の所有者が、自己と同契約の受託者との間に同契約に基づく債権債務を発生させる趣旨でこれを追認したとしても、その所有者が同契約に基づく販売代金の引渡請求権を取得すると解することはできない。
参照法条には、民法116条と民法560条が挙げられています。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
自分の物を勝手に売られた所有者が「その契約を認めます」と言ったのに、代金はもらえないの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨は、販売代金の引渡請求権を取得すると解することはできないと述べておる。追認をすれば自動的にあらゆる権利が手に入る、というものではないのじゃな。
この事案は「無権利者を委託者とする」販売委託契約についての判断じゃ。判示された範囲を超えて一般化してはならぬぞ。ここでは「追認の効果は、追認しただけで思うままに広がるものではない」という感覚を掴んでおけばよい。
無権代理の条文の流れ
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 民法113条 | 追認がなければ本人に効力を生じない/追認・拒絶は相手方に対して |
| 民法114条 | 相手方の催告権(確答なしは拒絶とみなす) |
| 民法115条 | 相手方の取消権(悪意の相手方を除く) |
| 民法116条 | 追認は契約の時にさかのぼる(第三者の権利を害せない) |
| 民法117条 | 無権代理人の責任 |
| 民法118条 | 単独行為の無権代理 |
資格別の演習
無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。
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解答:◯
正しい記述です。民法116条本文がそのとおり定めています。追認の時からではなく、契約の時にさかのぼる点が要点です。
無権代理行為の追認の効力は、当事者が別段の意思表示をしても、契約の時にさかのぼることを免れない。
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解答:×
誤りです。民法116条本文は「別段の意思表示がないときは」としており、当事者が別段の意思表示をすればそれに従います。
無権代理行為の追認は、契約の時にさかのぼって効力を生ずるが、第三者の権利を害することはできない。
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解答:◯
正しい記述です。民法116条ただし書がそのとおり定めています。さかのぼりによって、契約の時から追認の時までの間に権利を取得した第三者第三者契約の当事者以外の人のこと。民法177条では「登記がないことを主張する正当な利益を有する者」に限られます。用語ページを見る →が害されることのないようにする趣旨と読めます。
判例によれば、無権利者を委託者とする物の販売委託契約が締結された場合、当該物の所有者がこれを追認すれば、その所有者は当該契約に基づく販売代金の引渡請求権を取得する。
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解答:×
誤りです。最判平成23年10月18日(民集第65巻7号2899頁)の裁判要旨は、所有者が自己と受託者との間に契約に基づく債権債務を発生させる趣旨で追認したとしても「販売代金の引渡請求権を取得すると解することはできない」としています。