民法第115条・総則
民法第115条:無権代理の相手方の取消権
本人が追認をしない間、相手方は契約を取り消せます。ただし契約の時に代理権のないことを知っていた相手方は取り消せません。悪意の相手方が外される場面です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
無権代理だと分かったら、相手方のほうから「この契約はもうやめます」と言えないの? 本人の返事をずっと待つのはつらいよ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
言えるのじゃ。民法115条が、相手方に取消権を与えておる。民法114条の催告が「返事を促す」道なら、こちらは「自分から降りる」道じゃな。
条文の内容
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
本文:追認しない間は取り消せる
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 代理権を有しない者がした契約 |
| いつまで | 本人が追認追認取り消すことができる行為を、あとから「これでよい」と認めて、もう取り消せないものとして確定させること(民法122条)。用語ページを見る →をしない間 |
| 誰が | 相手方 |
| 効果 | 取り消すことができる |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「追認しない間」だから、追認されちゃったらもう取り消せないんだね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そのとおりじゃ。追認があれば契約は本人との間で確定する。早い者勝ちの競争のような側面があるのう。相手方としては、待つか、催告するか、降りるか——この3つから選ぶことになる。
ただし書:悪意の相手方は取り消せない
ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 基準時 | 契約の時において |
| 相手方の主観 | 代理権を有しないことを知っていた(悪意悪意ある特定の事情や事実を『知っている』こと。いじわるな心という意味ではありません。用語ページを見る →) |
| 効果 | 取り消すことができない |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
無権代理だと知りながら契約したなら、あとで「やめます」とは言えない、ということ?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文はそう定めておる。承知のうえで乗った船じゃからのう。取消権は、無権代理と知らずに巻き込まれた相手方を宙づりから解き放つためのものじゃ。
なお、ここは「知っていたとき」だけじゃ。過失で知らなかった者は除かれておらぬ。民法117条2項2号が過失を問題にしておるのと見比べておくとよい。
相手方の3つの道を並べる
| 条文 | 手段 | 使えない場合 |
|---|---|---|
| 民法114条 | 本人への催告催告相手に対して「〜してほしい」と促す通知のこと。制限行為能力者の相手方は、追認するかどうかの確答を求める催告ができます(民法20条)。用語ページを見る → | 条文に定めなし |
| 民法115条 | 契約の取消し | 本人が追認した後/契約の時に知っていたとき |
| 民法117条1項 | 無権代理人への履行又は損害賠償の請求 | 同条2項各号にあたるとき(知っていた/過失で知らなかった/無権代理人が行為能力の制限を受けていた) |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
同じ「無権代理の相手方」でも、条文ごとに主観による線引きが違う。114条は制限なし、115条は悪意のみ排除、117条は悪意と有過失の両方を排除じゃ。得られるものが大きい手段ほど、要求も厳しくなる——そう並べれば筋が見えるじゃろう。
取消しの効果
取り消された行為は、民法121条により「初めから無効であったものとみなす」ことになります。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
もともと本人には効力が生じていないのに、さらに取り消すってどういうこと?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よい問いじゃ。民法113条1項が否定しておるのは本人への効果帰属であって、契約そのものを消してはおらぬ。追認されれば効力が生じ得る状態が残っておる。
取消しは、その可能性ごと消し去るのじゃ。もう本人が追認しても、契約は生き返らぬ。相手方から見れば、そこではじめて話が終わるのじゃな。
資格別の演習
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法115条本文がそのとおり定めています。本人が追認追認取り消すことができる行為を、あとから「これでよい」と認めて、もう取り消せないものとして確定させること(民法122条)。用語ページを見る →をした後は取り消すことができません。
契約の時において代理権を有しないことを知っていた相手方も、本人が追認をしない間は、その契約を取り消すことができる。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法115条ただし書は「契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない」と定めており、悪意悪意ある特定の事情や事実を『知っている』こと。いじわるな心という意味ではありません。用語ページを見る →の相手方には取消権がありません。
民法115条ただし書により、代理権を有しないことを過失によって知らなかった相手方も、契約を取り消すことができない。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法115条ただし書が排除しているのは、契約の時において代理権を有しないことを「知っていた」相手方のみです。過失によって知らなかった場合を除外する文言はありません。過失が問題となるのは民法117条2項2号です。