民法第113条・総則
民法第113条:無権代理
代理権のない者がした契約は、本人が追認しなければ本人に効力を生じません。無効でも有効でもない宙づりの状態を、本人の意思で確定させる仕組みです。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
代理権が無いのに勝手に代理人を名乗って契約したら、その契約はどうなるの? 無効?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
無効とは書いておらぬ。民法113条1項は「本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない」じゃ。追認すれば効力が生ずる——つまり、まだ結論は決まっておらぬのじゃよ。
1項:追認がなければ本人に効力を生じない
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 場面 | 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約 |
| 効果 | 本人が追認追認取り消すことができる行為を、あとから「これでよい」と認めて、もう取り消せないものとして確定させること(民法122条)。用語ページを見る →をしなければ、本人に対してその効力を生じない |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「本人に対して」って書いてあるのが気になる。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
鋭いのう。条文が否定しておるのは本人への効果帰属じゃ。契約そのものが世の中から消えるとは書いておらぬ。
だからこそ、本人が追認すれば効力が生ずる。この宙づりの状態を終わらせる道が、民法113条から118条までに用意されておるのじゃ。
2項:追認・拒絶の相手方
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 追認追認取り消すことができる行為を、あとから「これでよい」と認めて、もう取り消せないものとして確定させること(民法122条)。用語ページを見る →又はその拒絶 |
| 原則 | 相手方に対してしなければ、その相手方に対抗できない |
| ただし書 | 相手方がその事実を知ったときは、この限りでない |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
本人が無権代理人に「追認するよ」と言っただけじゃダメなんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文はそう読める。宙づりの状態でいちばん困っておるのは相手方じゃ。その相手方に届かぬところで決着をつけられても、相手方は動きようがない。
ただし書があるのも道理でな。現に知ったのなら、伝えられたのと変わらぬ。形式より実質、という書きぶりじゃ。
宙づり状態を終わらせる4つの道
| 条文 | 誰が動くか | 内容 |
|---|---|---|
| 民法113条1項 | 本人 | 追認する(→効力が生ずる) |
| 民法114条 | 相手方 | 相当の期間を定めて催告催告相手に対して「〜してほしい」と促す通知のこと。制限行為能力者の相手方は、追認するかどうかの確答を求める催告ができます(民法20条)。用語ページを見る →(確答がなければ追認拒絶とみなす) |
| 民法115条 | 相手方 | 本人が追認をしない間、契約を取り消す |
| 民法117条 | 相手方 | 無権代理人に履行又は損害賠償を求める |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
本人が動くのを待つばかりではない。相手方の側からも終わらせられる——それが114条・115条じゃな。そして本人が追認せぬなら、117条で無権代理人本人に向き合うことになる。
判例:無権代理人が本人を相続した場合
無権代理人と本人という、対立する2つの立場が同一人に集まることがあります。相続です。
最判平成5年1月21日(民集第47巻1号265頁)
判示事項は「無権代理人が本人を共同相続した場合における無権代理行為の効力」です。裁判要旨は次のとおりです。
無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。(反対意見がある。)
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
無権代理人が相続したんだから、その人の相続分だけでも有効になりそうなのに。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨はそれを否定しておる。「共同相続人全員が共同して追認しない限り」——ここが芯じゃ。無権代理人の相続分に相当する部分でも、当然には有効にならぬ。他の共同相続人には何の落ち度も無いからのう。反対意見が付いておることからも、難しい論点であることが窺えるな。
最判昭和63年3月1日(集民第153号465頁)
判示事項は「無権代理人を本人とともに相続した者が更に本人を相続した場合における無権代理行為の効力」です。裁判要旨は次のとおりです。
無権代理人を本人とともに相続した者がその後更に本人を相続した場合においては、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解するのが相当である。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
相続が2回起きてる……。ややこしい!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
順を追えばよい。まず無権代理人と本人の両方を相続する者が現れ、その後さらに本人を相続した場合じゃ。要旨は、その場合には「本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずる」と述べておる。
2つの判例は、いずれも参照法条に民法113条・117条・896条を挙げておる。代理の条文だけでは決まらぬ場面であることが、そこからも分かるのう。
資格別の演習
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法113条1項がそのとおり定めています。条文は「無効とする」ではなく「本人に対してその効力を生じない」と書いており、本人の追認追認取り消すことができる行為を、あとから「これでよい」と認めて、もう取り消せないものとして確定させること(民法122条)。用語ページを見る →により効力が生ずる余地があります。
本人が無権代理人に対して追認の意思表示をした場合、相手方がその事実を知らなくても、本人は相手方に対して追認の効果を主張することができる。
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解答:×
誤りです。民法113条2項本文は「追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない」と定めています。もっとも同項ただし書により、相手方がその事実を知ったときは対抗することができます。
判例によれば、無権代理人が本人を共同相続した場合、無権代理人の相続分に相当する部分については、無権代理行為が当然に有効となる。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。最判平成5年1月21日(民集第47巻1号265頁)の裁判要旨は「共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない」としています。
判例によれば、無権代理人を本人とともに相続した者がその後更に本人を相続した場合には、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずる。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。最判昭和63年3月1日(集民第153号465頁)の裁判要旨がそのとおり述べています。同判決の参照法条には民法113条・117条・896条が挙げられています。