民法第107条・総則
民法第107条:代理権の濫用
代理人が自己や第三者の利益を図る目的で権限内の行為をし、相手方がその目的を知り又は知ることができたときは、無権代理とみなされます。権限はあるのに効果が本人に及ばない場面です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
代理人が、権限の中でだけど自分の得のために契約したら? 権限内なんだから、本人は文句を言えないの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこを手当てしておるのが民法107条じゃ。代理権を有しない者がした行為とみなす——権限はあるのに、無権代理として扱う。他の条文には無い、変わった作りをしておるぞ。
条文の内容
代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 代理人の目的 | 自己又は第三者の利益を図る目的 |
| 行為の範囲 | 代理権の範囲内の行為 |
| 相手方の主観 | その目的を知り、又は知ることができたとき |
| 効果 | 代理権を有しない者がした行為とみなす |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「代理権の範囲内」なのがポイントだね。権限を超えたわけじゃないんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこがこの条文の妙味じゃ。外から見れば、まったく正常な代理行為でな。権限の中で、顕名もして、きちんと契約しておる。違うのは心の中の目的だけじゃ。
じゃからこそ、相手方の主観が要件に入ってくる。心の中は外から見えぬゆえ、気づいていた(気づけたはずの)相手方にだけ、この効果を及ぼすのじゃな。
「みなす」ことの意味
効果は「代理権を有しない者がした行為とみなす」——つまり無権代理無権代理代理権を有しない者が他人の代理人としてする行為のこと。本人が追認しなければ本人に効力を生じません(民法113条1項)。用語ページを見る →として扱われます。
無権代理として扱われる、ということは、次の条文の出番になるということです。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 民法113条1項 | 本人が追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない |
| 民法114条 | 相手方は本人に対し、相当の期間を定めて追認するかどうかの催告催告相手に対して「〜してほしい」と促す通知のこと。制限行為能力者の相手方は、追認するかどうかの確答を求める催告ができます(民法20条)。用語ページを見る →ができる |
| 民法115条 | 本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる(悪意の相手方を除く) |
| 民法116条 | 追認は、契約の時にさかのぼって効力を生ずる(第三者の権利を害せない) |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「無効」じゃなくて「無権代理」にするんだ。本人が追認するかどうかを選べるんだね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よう気づいたのう。そこが優れた設計じゃ。無効にしてしまえば、本人が「この契約は悪くない、生かしたい」と思っても救えぬ。本人に選択権を残す——それが「みなす」先を無権代理にした意味じゃな。
同じ「みなす」を使う民法108条
すぐ隣の民法108条も、同じ効果を用いています。
| 条文 | 場面 | 効果 |
|---|---|---|
| 民法107条 | 代理権の濫用(自己又は第三者の利益を図る目的) | 代理権を有しない者がした行為とみなす |
| 民法108条1項 | 自己契約自己契約契約の一方の当事者が、同じ契約について相手方の代理人も兼ねること。代理権を有しない者がした行為とみなされます(民法108条1項本文)。用語ページを見る →・双方代理双方代理同一の法律行為について、同じ人が当事者双方の代理人となること。代理権を有しない者がした行為とみなされます(民法108条1項本文)。用語ページを見る → | 同じ |
| 民法108条2項 | 代理人と本人との利益相反行為利益相反行為代理人と本人との利益がぶつかる行為のこと。自己契約・双方代理以外でも、代理権を有しない者がした行為とみなされます(民法108条2項)。用語ページを見る →行為 | 同じ |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
107条と108条は、代理人が本人の利益に背く場面をまとめて扱っておる。107条は目的(心の中)、108条は行為の形(外から見える立場の重なり)で切り分けておるのじゃ。
だから108条には相手方の主観が要件になっておらぬ。外から見て分かるからのう。
資格別の演習
代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなされる。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法107条がそのとおり定めています。効果は無効ではなく無権代理無権代理代理権を有しない者が他人の代理人としてする行為のこと。本人が追認しなければ本人に効力を生じません(民法113条1項)。用語ページを見る →とみなすことであり、本人による追認の余地が残ります。
代理人が自己の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合、相手方の主観を問わず、その行為は無効となる。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法107条は「相手方がその目的を知り、又は知ることができたとき」を要件としており、相手方の主観を問わないものではありません。また効果も無効ではなく、代理権を有しない者がした行為とみなすことです。
民法107条により無権代理とみなされた行為についても、本人が追認をすれば、その契約は本人に対して効力を生じ得る。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法107条の効果は「代理権を有しない者がした行為とみなす」ことであるため、民法113条以下の無権代理無権代理代理権を有しない者が他人の代理人としてする行為のこと。本人が追認しなければ本人に効力を生じません(民法113条1項)。用語ページを見る →の規定が働きます。民法113条1項の反対解釈として、本人が追認をすれば本人に対して効力を生じ、民法116条本文により契約の時にさかのぼって効力を生じます。