刑法第207条・傷害の罪
刑法第207条:同時傷害の特例
2人以上の暴行で傷害が生じ、誰が生じさせたか分からないときに共犯の例によるとする規定です。適用の限界を示した令和2年の最高裁決定があります。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
共犯じゃないのに共犯扱い? そんなことしていいの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文が「共同して実行した者でなくても、共犯の例による」と書いておるのじゃ。異例の規定であることは、条文自身が「特例」と名乗っておることからも分かるのう。
条文の内容
二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。
要件を分解する
| 要件 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 場面 | 2人以上で暴行を加えて人を傷害した |
| 不明① | それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができない |
| 不明② | またはその傷害を生じさせた者を知ることができない |
| 効果 | 共同して実行した者でなくても、共犯の例による |
なぜこの規定があるのか
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
誰がやったか分からないなら、普通は誰も責任を負わないよね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そのとおり。じゃがそれでは、2人がかりで殴った者たちが、誰も傷害の責任を負わぬという事態になる。207条は、そこを埋めるために置かれておるのじゃ。
判例——後行者への適用
最判令和2年9月30日は、他の者が先行して被害者に暴行を加え、これと同一の機会に、後行者が途中から共謀加担したが、被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたとは認められない場合について、次のように判示しました。
| 論点 | 判断 |
|---|---|
| ① 207条の適用 | その傷害を生じさせた者を知ることができないときは、刑法207条の適用により後行者は当該傷害についての責任を免れない |
| ② 適用の限界 | 後行者に責任を問い得るのは、後行者の加えた暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであるときに限られる |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
適用できるけど、限界もある、ってことか。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
うまくまとめたのう。傷害を生じさせ得る危険性——これが最高裁の示した歯止めじゃ。207条は特例じゃからこそ、無限には広がらぬのじゃな。
「共犯の例による」
同時傷害の特例同時傷害の特例2人以上で暴行を加えて人を傷害した場合に、傷害の軽重や傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても共犯の例によるという規定(刑法207条)。最高裁は、後行者に責任を問い得るのは、その暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するときに限られるとしました。用語ページを見る →の効果は、共同正犯共同正犯2人以上共同して犯罪を実行した者のこと(刑法60条)。全員が正犯として扱われ、刑の減軽はありません。用語ページを見る →(刑法60条)と同じ扱いを受けることです。つまり、各人が傷害の結果全体について責任を負います。
206条との違い
| 条文 | 捉える者 | 効果 |
|---|---|---|
| 206条 | 現場で勢いを助けた者 | 独自の法定刑(1年以下の拘禁刑等) |
| 207条 | 暴行を加えた者 | 共犯の例による(204条・205条の刑) |
資格別の演習
2人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、その傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても共犯の例による。
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解答:◯
正しい記述です。刑法207条の定めです。
途中から共謀加担した後行者に刑法207条の適用により傷害の責任を問い得るのは、後行者の加えた暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであるときに限られる。
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解答:◯
正しい記述です。最判令和2年9月30日の判断です。
被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたとは認められない場合でも、その傷害を生じさせた者を知ることができないときは、後行者は刑法207条の適用により責任を免れない。
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解答:◯
正しい記述です。最判令和2年9月30日の判断です。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
次の208条は、204条の裏側にあたる条文じゃ。