刑法第202条・殺人の罪
刑法第202条:自殺関与及び同意殺人
自殺の教唆・幇助と、嘱託・承諾を得た殺人を、同じ刑で処罰します。殺人罪と比べたときの刑の落差が、この条文の意味を語ります。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
199条は5年以上なのに、202条は6月以上7年以下……ずいぶん違う。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
本人の意思がそこにあるからじゃ。とはいえ罪でなくなるわけではない。条文は「罰しない」とは書いておらぬ。軽くはするが、許しはしない——そういう構えじゃな。
条文の内容
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の拘禁刑に処する。
4つの類型
| 類型 | 条文の言葉 | 分類 |
|---|---|---|
| ① | 人を教唆して自殺させた | 自殺関与自殺関与人を教唆しまたは幇助して自殺させること(刑法202条前段)。同意殺人と同じ条文に置かれ、6月以上7年以下の拘禁刑です。用語ページを見る → |
| ② | 人を幇助して自殺させた | 自殺関与 |
| ③ | 人をその嘱託を受けて殺した | 同意殺人同意殺人人をその嘱託を受け、またはその承諾を得て殺すこと(刑法202条後段)。殺人罪より大幅に軽い6月以上7年以下の拘禁刑です。用語ページを見る → |
| ④ | 人をその承諾を得て殺した | 同意殺人 |
いずれも刑は6月以上7年以下の拘禁刑です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
4つとも同じ刑なんだ。自分で手を下したかどうかも関係ない。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文がそう書いておるからのう。自殺させる側に回った者と、頼まれて殺した者を同列に置く——ここが202条の設計じゃ。
嘱託嘱託本人からの依頼。刑法202条(同意殺人)、213条(同意堕胎)、214条(業務上堕胎)が「嘱託を受け、又はその承諾を得て」という形で用いています。用語ページを見る →と承諾
| 語 | 意味するところ |
|---|---|
| 嘱託 | 本人から依頼があった |
| 承諾 | 本人が同意した |
同じ組み合わせは、刑法213条(同意堕胎同意堕胎女子の嘱託を受け、またはその承諾を得て堕胎させること(刑法213条前段)。よって女子を死傷させたときは、同条後段により重く処断されます。用語ページを見る →)・214条(業務上堕胎業務上堕胎医師、助産師、薬剤師または医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、またはその承諾を得て堕胎させること(刑法214条)。同意堕胎罪より重い3月以上5年以下の拘禁刑です。用語ページを見る →)でも「嘱託を受け、又はその承諾を得て」という形で使われています。
判例——訴因・罰条の変更
最判昭和28年9月30日は、殺人の起訴に対し刑法38条2項を適用し同意殺人の責任を認めるときは、訴因、罰条の変更を必要としないとしました。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
刑法38条2項は「重い罪に当たるべき行為をしたのに、その重い罪に当たることを知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない」と定めておる。199条のつもりで起訴されても、202条の責任にとどまる場合があるわけじゃな。
未遂
第203条により、199条および202条の罪の未遂は罰せられます。
199条との比較
| 条文 | 罪 | 刑 |
|---|---|---|
| 刑法199条 | 殺人殺人人を殺すこと(刑法199条)。死刑または無期もしくは5年以上の拘禁刑で、未遂(203条)・予備(201条)も処罰されます。用語ページを見る → | 死刑または無期もしくは5年以上の拘禁刑 |
| 刑法202条 | 自殺関与・同意殺人 | 6月以上7年以下の拘禁刑 |
資格別の演習
人を幇助して自殺させた者は、人をその嘱託を受けて殺した者と同じ刑に処せられる。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。刑法202条は4つの類型をすべて6月以上7年以下の拘禁刑としています。
殺人の起訴に対し刑法38条2項を適用して同意殺人の責任を認めるときは、訴因・罰条の変更を必要としない。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。最判昭和28年9月30日の判断です。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
章の締めくくりは203条。未遂の範囲を確かめよう。