刑法第39条・総則
刑法第39条:心神喪失及び心神耗弱
心神喪失者の行為は罰せず、心神耗弱者の行為は刑を減軽します。「罰しない」と「減軽する」の差、そして精神鑑定と裁判所の判断の関係を判例から確認します。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
ニュースでよく聞く「39条」だ。お医者さんが決めるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこが誤解されやすいところじゃ。鑑定は証拠のひとつ。最後に責任能力を判定するのは裁判所なのじゃよ。まずは条文を見よう。たった2行しかない。
条文の内容
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 1項 | 心神喪失者の行為は、罰しない |
| 2項 | 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する |
刑法は心神喪失心神喪失刑法39条1項が「罰しない」と定める者の状態。刑法は定義を置いておらず、責任を問う前提となる能力を欠く場合として扱われます。犯罪は成立しません。用語ページを見る →・心神耗弱心神耗弱刑法39条2項が「その刑を減軽する」と定める者の状態。心神喪失とは異なり犯罪は成立しますが、減軽は必要的で、裁判所の裁量ではありません。用語ページを見る →の定義を置いていません。条文が決めているのは効果だけです。
「罰しない」と「減軽する」
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
1項は「罰しない」、2項は「減軽する」……あれ、2項は「できる」じゃないんだ!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よく気づいたのう。2項の減軽は必要的じゃ。 36条2項の過剰防衛や37条1項ただし書の過剰避難が「できる」だったのと、はっきり違う。ここは試験でもよく問われるぞ。
| 条文 | 効果 | 裁量の有無 |
|---|---|---|
| 39条1項(心神喪失) | 罰しない | — |
| 39条2項(心神耗弱) | 刑を減軽する | 必要的 |
| 36条2項(過剰防衛) | 刑を減軽し、または免除することができる | 裁量的 |
| 37条1項ただし書(過剰避難) | 刑を減軽し、または免除することができる | 裁量的 |
判例——鑑定と裁判所の役割
最判平成20年4月25日は、責任能力判断の前提となる生物学的要素である精神障害の有無・程度、およびこれが心理学的要素に与えた影響の有無・程度について、専門家である精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には、鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり、鑑定の前提条件に問題があったりするなど、これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、裁判所はその意見を十分に尊重して認定すべきであると判示しました。
同判決はまた、統合失調症の幻覚妄想の強い影響下で行われた行為について、それが犯罪であることを認識し、後に自首しているなど、一般には正常な判断能力を備えていたことをうかがわせる事情があるからといって、そのことのみによって心神耗弱にとどまっていたと認めることは困難であるとしています。
他方、最決平成21年12月8日は、裁判所は、特定の精神鑑定の意見の一部を採用した場合においても、責任能力の有無・程度について、当該意見の他の部分に拘束されることなく、被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して判定することができると判示しました。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
尊重はするけど、まるごと従うわけじゃないんだね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そういうことじゃ。「専門家の意見は十分に尊重する。ただし責任能力の判定そのものは裁判所の仕事」。この二つの判例は、その両面を示しておる。
資格別の演習
心神耗弱者の行為については、その刑を減軽しなければならない。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。刑法39条2項は「その刑を減軽する」と定めており、必要的減軽です。「できる」ではない点が過剰防衛・過剰避難との違いです。
精神医学者の鑑定意見が証拠となっている場合、裁判所は、その意見の一部を採用したときは、同じ鑑定の他の部分にも拘束される。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。最決平成21年12月8日は、特定の精神鑑定の意見の一部を採用した場合でも、当該意見の他の部分に拘束されることなく、犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して責任能力を判定できるとしています。
幻覚妄想の影響下の行為であっても、行為者が犯罪であることを認識し後に自首しているときは、そのことのみによって心神耗弱にとどまると認めてよい。
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解答:×
誤りです。最判平成20年4月25日は、そのような事情があるからといって、そのことのみによって心神喪失ではなく心神耗弱にとどまっていたと認めることは困難であるとしています。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
なお第40条は削除された条文じゃ。空き番号になっておるので、条数を数えるときは気をつけるのじゃよ。