刑法第6条・総則
刑法第6条:刑の変更
犯罪の後に法律が変わって刑が重くなっても軽くなっても、適用されるのは軽いほうです。遡及処罰の禁止を刑の重さの面で徹底した条文を確認します。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
やっちゃった後に法律が変わって刑が重くなったら、重いほうで裁かれちゃうの? そんなの後出しじゃん!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
安心せい。第6条は一言でそれを封じておる。「その軽いものによる」——たったこれだけの条文じゃが、効き目は大きいのじゃよ。
条文の内容
刑法6条は次のとおりです。
犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。
条文の要素は3つです。
- 犯罪後の法律であること
- その法律によって刑の変更があったこと
- 結果として軽いほうを適用する
罪刑法定主義とのつながり
罪刑法定主義罪刑法定主義どんな行為が犯罪となり、どんな刑が科されるかは、あらかじめ法律で定められていなければならないという原則。「法律なければ刑罰なし」と表現されます。用語ページを見る →からは、行為の時点で犯罪とされていなかった行為を後の法律で処罰してはならないという遡及処罰の禁止遡及処罰の禁止行為の時点で犯罪とされていなかった行為を、後からできた法律で処罰してはならないという原則。刑法6条は、犯罪後に刑が変更されたときは軽いものによると定めて、この考え方を刑の重さの面でも徹底しています。用語ページを見る →が導かれます。刑法6条は、これを一歩進めて「犯罪ではあったが刑が重くなった」場合まで押さえた規定です。
| 法改正の方向 | 適用される刑 |
|---|---|
| 犯罪後に刑が重くなった | 行為時の軽い刑 |
| 犯罪後に刑が軽くなった | 裁判時の軽い刑 |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
待って、軽くなったときも軽いほうなの? 行為の時は重かったのに、得しちゃうよ?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこがこの条文のおもしろいところじゃ。「軽いものによる」としか書いておらんから、どちらの向きでも軽いほうが選ばれる。国が「もうこんなに重く罰する必要はない」と考えを改めたのなら、その判断を被告人にも及ぼすのが筋じゃという理解じゃな。
「刑の変更」の比べ方
どちらが軽いかは、刑法10条の定める法定刑法定刑個々の犯罪について、条文があらかじめ定めている刑の種類と範囲のこと(「〇年以下の拘禁刑」など)。ここを出発点に、加重・減軽を経て実際の刑が決まります。用語ページを見る →の軽重の比較によります。主刑の種類が違えば刑法9条の順序により、同種の刑なら長期・多額、それが同じなら短期・寡額で比べます。
判例
最判昭和45年4月16日は、改正刑法の施行前にされた業務上過失傷害の行為について懲役刑を言い渡した判決を、刑法6条に違反し被告人に不利益であるとして破棄しました。刑の変更があった場合に軽いほうによるという原則が、上訴審で是正されるべき違法にあたることを示した事例です。
資格別の演習
行為の後に法律が改正されて法定刑が重くなった場合、行為時の軽い刑が適用される。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。刑法6条は「犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる」と定めています。
行為の後に法律が改正されて法定刑が軽くなった場合、裁判時の軽い刑が適用される。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。刑法6条は変更の向きを限定していません。重くなった場合も軽くなった場合も、常に軽いほうによります。
刑法6条にいう「刑の変更」の軽重は、裁判所が事案ごとに実質的な処罰の重さを見て判断する。
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解答:×
誤りです。刑の軽重は刑法10条が定める基準——主刑の種類の順序(刑法9条)、同種の刑では長期・多額、それが同じなら短期・寡額——によって比較されます。事案ごとの実質判断ではありません。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
短い条文じゃが、「国家は後出しをしない」という約束が込められておる。刑法の入口として、しっかり押さえておきたい一条じゃな。