刑法第3条・総則
刑法第3条:国民の国外犯(属人主義)
日本国民が国外で犯した罪のうち、17号にわたって列挙されたものだけが処罰されます。殺人・傷害・窃盗が入り、器物損壊や単純横領が入らない——その線引きを確認します。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
日本人が外国でやったことなら、全部日本の刑法で裁けるんでしょ? 日本人なんだから。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
それが違うのじゃ。第3条は「次に掲げる罪」と言って、17個の号でわざわざ列挙しておる。書いてない罪は処罰されない。ここが試験でよく狙われるところじゃよ。
条文の内容
刑法3条は、日本国外において列挙された罪を犯した日本国民に刑法を適用すると定めます。犯人の国籍を基準とするこの考え方を属人主義属人主義犯人の「国籍」を基準に自国の刑法を適用する考え方。刑法3条が、日本国外で一定の罪を犯した日本国民に刑法を適用するとしているのがこれにあたります。用語ページを見る →といいます。
主な列挙内容は次のとおりです。
| 号 | 罪 |
|---|---|
| 1号 | 現住建造物等放火、非現住建造物等放火(109条1項)とこれらの未遂等 |
| 2号 | 現住建造物等浸害(119条) |
| 3号 | 私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使、一定の電磁的記録電磁的記録刑法7条の2が定める、人の知覚では認識できない方式で作られ、コンピュータによる情報処理に使われる記録のこと。紙の文書ではないデータを刑法が扱うための入り口となる定義です。用語ページを見る →に係る罪 |
| 4号 | 私印偽造及び不正使用等(167条) |
| 5号 | 不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、未遂罪、不同意わいせつ等致死傷、重婚 |
| 6号 | 贈賄(198条) |
| 7号 | 殺人(199条)とその未遂罪 |
| 8号 | 傷害(204条)、傷害致死(205条) |
| 9号 | 業務上堕胎及び同致死傷、不同意堕胎、不同意堕胎致死傷 |
| 10号 | 保護責任者遺棄等(218条)と同条の罪に係る遺棄等致死傷 |
| 11号 | 逮捕及び監禁、逮捕等致死傷 |
| 12号 | 略取・誘拐、人身売買に関する罪(224条〜228条) |
| 13号 | 名誉毀損(230条) |
| 14号 | 窃盗、不動産侵奪、強盗、事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗・不同意性交等及び同致死、これらの未遂罪 |
| 15号 | 詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝とその未遂罪(246条〜250条) |
| 16号 | 業務上横領(253条) |
| 17号 | 盗品譲受け等のうち256条2項の罪 |
「入っていない罪」に注意する
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
窃盗も詐欺も入ってるのに、入ってないものなんてあるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
あるとも。たとえば器物損壊(261条)、単純横領(252条)、住居侵入(130条)、業務妨害(233条・234条)は列挙されておらん。日本人が国外でこれらを犯しても、日本の刑法では処罰できんのじゃ。
とくに紛らわしいのが横領です。16号が挙げるのは業務上横領(253条)だけで、単純横領(252条)は入っていません。財産犯のなかでも、条文が拾っているものと拾っていないものを分けて覚える必要があります。
第2条との違い
第2条は「罪の種類」で決まるため犯人の国籍を問いませんが、第3条は日本国民であることが要件です。日本国民でない者が国外で日本国民に対して罪を犯した場合は、次条の刑法3条の2が受け持ちます。
資格別の演習
日本国民が日本国外で他人の財物を窃取した場合、刑法が適用される。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。刑法3条14号は窃盗(235条)を挙げているため、日本国民の国外犯として処罰されます(属人主義属人主義犯人の「国籍」を基準に自国の刑法を適用する考え方。刑法3条が、日本国外で一定の罪を犯した日本国民に刑法を適用するとしているのがこれにあたります。用語ページを見る →)。
日本国民が日本国外で他人の自動車を故意に破壊した場合、刑法3条により器物損壊罪として処罰される。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。刑法3条の列挙に器物損壊罪(261条)は含まれていません。列挙されていない罪について国民の国外犯規定は働きません。
日本国民が日本国外で、自己が業務上でなく預かっていた他人の物を横領した場合、刑法3条により処罰される。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。刑法3条16号が挙げるのは業務上横領(253条)であり、単純横領(252条)は列挙されていません。同じ「横領」でも国外犯として処罰されるかどうかが分かれます。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
第3条は「列挙されているか」がすべてじゃ。覚えるのが大変なら、まず入っていない罪——器物損壊・単純横領・住居侵入——から押さえるとよいぞ。