民法第137条・総則
民法第137条:期限の利益の喪失
破産手続開始の決定、担保の滅失等、担保供与義務の不履行。この3つの場合、債務者は期限の利益を主張できません。第五節を締めくくる条文です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「来年払えばいい」という約束でも、途中で取り上げられちゃうことがあるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
あるのじゃ。民法137条が3つの場合を挙げておる。いずれも債権者が待てなくなる事情でな。待つ約束は、待てるだけの土台があってこそ成り立つのじゃ。
条文の内容
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。 一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。 二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。 三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
| 号 | 事由 |
|---|---|
| 一 | 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき |
| 二 | 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき |
| 三 | 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき |
効果は、債務者が期限の利益期限の利益期限が来るまで履行しなくてよいことによる利益のこと。債務者の利益のために定めたものと推定され(民法136条1項)、放棄もできます(同条2項)。用語ページを見る →を主張することができないことです。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
3つのうち2つが担保の話なんだね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よう数えたのう。そこにこの条文の性格が出ておる。待てるのは、いざというときの備えがあるからじゃ。その備えを債務者自身が損なったり、約束した備えを差し出さなかったりすれば、待つ理由が消える。
一号の破産も同じ筋でな。支払える見込みそのものが崩れた場面じゃ。
二号は「債務者が」した場合
二号は「債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき」と書いています。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
地震で担保の建物が壊れた、みたいな場合は?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文の主語は「債務者が」じゃ。債務者の行為による場合を書いておる、と読むのが素直じゃな。もっとも、条文はそれ以上のことを書いておらぬ。書かれておらぬところを埋めてはならぬぞ。
ここで押さえるべきは、三つとも債務者の側の事情であることじゃ。債権者の都合で期限の利益が奪われる、という書き方にはなっておらぬ。
「主張することができない」
条文は「期限の利益を主張することができない」という書き方をしています。
| 条文 | 書きぶり |
|---|---|
| 民法136条2項 | 期限の利益は、放棄することができる |
| 民法137条 | 債務者は、期限の利益を主張することができない |
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
136条2項は債務者が自ら手放す道、137条は主張を封じられる道じゃ。同じ「期限の利益が無くなる」でも、向きが違うのう。
第五節「条件及び期限」の全体像
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 民法127条 | 条件が成就した場合の効果(停止条件・解除条件) |
| 民法128条・129条 | 成否未定の間の禁止と許容 |
| 民法130条 | 条件の成就の妨害等 |
| 民法131条〜134条 | 既成条件・不法条件・不能条件・随意条件 |
| 民法135条 | 期限の到来の効果(始期・終期) |
| 民法136条 | 期限の利益及びその放棄 |
| 民法137条 | 期限の利益の喪失 |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
条件が8か条で、期限が3か条なんだ。条件のほうがずっと多い。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
来るかどうか分からぬものは、扱いが難しいからのう。成就するのか、妨げられていないか、そもそも条件として認めてよいのか——考えることが多い。
一方、期限は必ず来る。決めるべきは「来たらどうなるか」と「来るまでの利益は誰のものか」くらいじゃ。不確かさの分だけ条文が要る——第五節は、そのことをよく表しておるのう。
資格別の演習
債務者が破産手続開始の決定を受けたときは、債務者は期限の利益を主張することができない。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法137条1号がそのとおり定めています。同条は、このほか担保の滅失等(2号)と担保供与義務の不履行(3号)を挙げています。
債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないときは、債務者は期限の利益を主張することができない。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法137条3号がそのとおり定めています。担保に関する事由は、同条2号(滅失・損傷・減少)とあわせて2つ挙げられています。
債権者が破産手続開始の決定を受けたときは、債務者は期限の利益を主張することができない。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。民法137条1号が挙げているのは「債務者が破産手続開始の決定を受けたとき」です。同条の3つの号は、いずれも債務者の側の事情を定めています。
期限の利益は、債務者が放棄することによって失われるほか、民法137条各号の事由があるときは債務者がこれを主張できなくなる。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法136条2項本文が放棄を認め、民法137条が3つの事由について「期限の利益を主張することができない」と定めています。前者は債務者が自ら手放す道、後者は主張が封じられる道です。