民法第130条・総則
民法第130条:条件の成就の妨害等
故意に条件の成就を妨げた者に対しては成就したものとみなすことができ、不正に成就させた者に対しては成就しなかったものとみなすことができます。仕掛けた側に不利益を向ける条文です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
条件が成就すると損をする人が、わざと成就しないように邪魔したら? 「成就しなかったから払いません」で通っちゃうの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
通させぬ。民法130条1項が、相手方に成就したものとみなす道を与えておる。しかも2項は逆向きの手当てじゃ。自分に都合よく条件をいじった者は、その結果を享受できぬ——それがこの条文の芯じゃな。
1項:故意に成就を妨げた場合
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 条件が成就することによって不利益を受ける当事者 |
| 何をした | 故意にその条件の成就を妨げた |
| 誰が | 相手方が |
| 効果 | その条件が成就したものとみなすことができる |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「みなすことができる」って、相手方が選べるんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこが大事じゃ。自動的に成就とみなされるのではない。相手方が主張してはじめて効く。妨害されたからといって、いつでも成就扱いが有利とは限らぬからのう。選択権を相手方に持たせておるのじゃ。
2項:不正に成就させた場合
条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。
| 1項 | 2項 | |
|---|---|---|
| 仕掛けた当事者 | 成就で不利益を受ける側 | 成就で利益を受ける側 |
| したこと | 故意に成就を妨げた | 不正に成就させた |
| 相手方ができること | 成就したものとみなす | 成就しなかったものとみなす |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
1項は「故意に」で、2項は「不正に」なんだ。言葉が違う!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
よう気づいたのう。条文が別の語を選んでおる以上、同じ意味と決めつけてはならぬ。妨げるのは「故意」で足り、成就させるほうは「不正」であることを求めておる——条文の字面はそう読める。
理屈も分からぬではない。条件を成就させる行為そのものは、本来とがめられるものではないからのう。成就に向けて努力するのは当たり前じゃ。そこに一線を引くには、「故意」だけでは足りぬのじゃな。
判例:故意に妨げられた事例
最判昭和45年10月22日(民集第24巻11号1599頁)
判示事項は「宅地建物取引業者を排除して売買契約が成立した場合に停止条件の成就が故意に妨げられたとして右業者の報酬請求権が認められた事例」です。
裁判要旨は、次のような事実関係を挙げます。
- 買受人が宅地建物取引業者に仲介を依頼し、買受契約の成立を停止条件として一定額の報酬を支払う旨を約した
- 買受人がその業者を排除して直接売渡人との間に契約を成立させた
- 契約の成立時期が業者の仲介活動の時期に近接していた
- 当時、仲介活動により買受希望価額にあと僅かの差が残っているだけで、間もなく買受契約が成立するに至る状態にあった
- 買受契約における買受価額が、業者と買受人が下相談した価額を僅かに上回る
そのうえで要旨は、買受人は「業者の仲介によつて間もなく買受契約の成立に至るべきことを熟知して故意にその仲介による契約の成立を妨げたものというべき」であり、業者は停止条件が成就したものとみなして約定報酬を請求できる、としています。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
条件が成就する寸前で、仲介業者を追い出しちゃったんだ……。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨が挙げる事情を数えてみよ。時期の近接、あと僅かの価格差、下相談した価額との近さ——ひとつひとつを積み上げて「熟知して故意に妨げた」と認めておる。故意はこうやって認定されるという見本じゃな。
判例:故意に成就させた場合
最判平成6年5月31日(民集第48巻4号1029頁)
判示事項は「条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときと民法一三〇条の類推適用」です。裁判要旨は次のとおりです。
条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときは、民法一三〇条の類推適用により、相手方は条件が成就していないものとみなすことができる。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
今の2項と同じ結論だ!
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
結論は近い。じゃがそこへ至る道が違うぞ。この判決は「民法一三〇条の類推適用により」と述べておる。類推適用類推適用条文が直接あてはまらない場面でも、趣旨が同じだと考えられるときに、その条文を似た場面に及ぼして適用すること。条文の文言をそのまま使う「適用」とは区別されます。用語ページを見る →じゃ。
そして文言も見比べるのじゃ。判決が言うのは「故意に条件を成就させたとき」、現行の民法130条2項が定めるのは「不正にその条件を成就させたとき」——同じ言葉ではない。判例の結論を、そのまま現行2項の解釈として持ち込んではならぬぞ。
資格別の演習
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
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解答:◯
正しい記述です。民法130条1項がそのとおり定めています。「みなす」のではなく「みなすことができる」であり、主張するかどうかは相手方が選べます。
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、その条件は当然に成就したものとみなされる。
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解答:×
誤りです。民法130条1項は「相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる」と定めています。当然に成就とみなされるのではなく、相手方の主張によります。
判例によれば、買受契約の成立を停止条件として仲介業者に報酬を支払う旨を約した買受人が、その業者を排除して直接売渡人と契約を成立させた場合、判示の事情の下では、業者は停止条件が成就したものとみなして約定報酬を請求することができる。
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解答:◯
正しい記述です。最判昭和45年10月22日(民集第24巻11号1599頁)の裁判要旨がそのとおり述べています。契約成立時期の近接、価格差が僅かであったこと、下相談した価額との関係など、複数の事情を挙げたうえでの判断です。
民法130条2項は、条件が成就することによって利益を受ける当事者が「故意に」その条件を成就させたときについて定めている。
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解答:×
誤りです。民法130条2項の文言は「不正にその条件を成就させたとき」です。「故意に条件を成就させたとき」という表現は、民法130条の類推適用を認めた最判平成6年5月31日(民集第48巻4号1029頁)の裁判要旨に現れるもので、現行2項の文言とは異なります。