民法第110条・総則

民法第110条:権限外の行為の表見代理

代理人が権限外の行為をした場合でも、第三者に代理権があると信ずべき正当な理由があれば、本人が責任を負います。94条2項との類推適用でも登場する条文です。

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レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

「賃貸の手続だけお願い」と頼んだ代理人が、勝手に家を売っちゃったら? 権限を超えてるから、本人には関係ない?

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

そう言い切れぬのが民法110条じゃ。第三者に「代理権がある」と信ずべき正当な理由正当な理由せいとうなりゆう代理人の権限があると第三者が信じたことを是とするだけの事情。民法110条のほか、109条2項・112条2項でも、権限外の行為について責任を認める要件とされています。用語ページを見る →があれば、本人が責任を負う。表見代理の中でも、最もよく問われる条文じゃな。

条文の内容

前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

条文は準用の形をとっているので、ほどいて読みます。

要素 内容
準用される規定 民法109条1項本文(表示をした者は責任を負う)
場面 代理人がその権限外の行為をした
要件 第三者に、代理人の権限があると信ずべき正当な理由があること
効果 本人がその責任を負う

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

109条と違って、こっちは代理人に本当に代理権があるんだよね。ただ、その範囲を超えただけ。

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

そこが決定的な違いじゃ。何らかの代理権(基本となる権限)は現にある。そのうえで、その枠から外へ出た行為をした——それが110条の場面じゃな。

だから条文も「代理人がその権限外の行為をした場合」と書いておる。代理権がまるで無い者の行為は、この条文の想定ではない。

「正当な理由」

条文は「代理人の権限があると信ずべき正当な理由正当な理由せいとうなりゆう代理人の権限があると第三者が信じたことを是とするだけの事情。民法110条のほか、109条2項・112条2項でも、権限外の行為について責任を認める要件とされています。用語ページを見る →があるとき」と定めるだけで、その中身を書いていません。

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

ここは条文が語らぬところじゃ。事案ごとに判断されるほかない。書かれておらぬ基準を、覚えた話で埋めてはならぬ——この連載で何度も言うてきたとおりじゃな。

なお109条2項と112条2項も、同じ「正当な理由」という言葉を使っておる。権限をはみ出した場面に共通の関門として置かれておるのじゃ。

判例:94条2項と110条の類推適用

民法110条は、条文が直接あてはまらない場面でも、類推適用類推適用るいすいてきよう条文が直接あてはまらない場面でも、趣旨が同じだと考えられるときに、その条文を似た場面に及ぼして適用すること。条文の文言をそのまま使う「適用」とは区別されます。用語ページを見る →という形で登場します。

最判平成18年2月23日(民集第60巻2号546頁)

不動産の所有者が関与して虚偽の外観が作られた事案について、民法94条2項及び民法110条の類推適用が問題となった判決です。この判決は民法94条の解説でも扱っていますので、あわせて読むと理解が深まります。

レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長

代理の話じゃないのに、110条が出てくるんだ?

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

そこが面白いところでな。110条が守っておるのは「外から見えるものを信じた者」じゃ。虚偽表示虚偽表示きょぎひょうじ相手方と示し合わせてウソの意思表示をすること(通謀虚偽表示)。当事者間では無効ですが、善意の第三者には無効を主張できません。用語ページを見る →の94条2項も、同じものを守っておる。似た構図の場面では、条文の趣旨を借りてくることがあるのじゃよ。

ただし類推適用類推適用るいすいてきよう条文が直接あてはまらない場面でも、趣旨が同じだと考えられるときに、その条文を似た場面に及ぼして適用すること。条文の文言をそのまま使う「適用」とは区別されます。用語ページを見る →は、条文の文言をそのまま使う「適用」とは違う。どういう事実関係の下で認められたのかを、判例に即して押さえるのじゃぞ。

表見代理3か条の並び

条文 代理権の状態 要件
民法109条1項 もともと無い(与えた旨の表示だけがある) 第三者が知らず、過失もないこと
民法110条 ある。ただし範囲外の行為 権限があると信ずべき正当な理由
民法112条1項 あったが消滅した 消滅の事実を知らず、過失もないこと

ガレ博士フクロウ / 駅長補佐

109条は「無かった」、110条は「足りなかった」、112条は「なくなった」。この3つで、代理権が欠けるパターンを覆っておる。並べて覚えるのが早道じゃな。

資格別の演習

宅建正誤問題AI生成類題

代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人はその責任を負う。

解答・解説を見る

解答:

正しい記述です。民法110条は、民法109条1項本文の規定を、代理人が権限外の行為をした場合について準用しています。

行政書士正誤問題AI生成類題

民法110条は、代理権をまったく有しない者がした行為について、第三者に正当な理由があるときは本人が責任を負う旨を定めたものである。

解答・解説を見る

解答:×

誤りです。民法110条が想定するのは「代理人がその権限外の行為をした場合」であり、何らかの代理権があることが前提です。代理権を与えた旨の表示があるだけの場合は民法109条が、代理権が消滅した後の場合は民法112条が扱います。

司法書士正誤問題AI生成類題

民法110条は、「正当な理由」の判断基準を条文上明示している。

解答・解説を見る

解答:×

誤りです。民法110条は「第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるとき」と述べるにとどまり、その判断基準を定めていません。同じ文言は民法109条2項・112条2項にも用いられています。

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