民法第34条・総則
民法第34条:法人の能力
法人は、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において権利を有し、義務を負います。会社の政治献金をめぐる八幡製鉄事件が、この「目的の範囲」の広さを示しています。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
人は生まれた時から権利能力があるって習ったよね(民法3条1項)。法人はどうなの? 同じように何でもできるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこが決定的に違うのじゃ。民法34条は、法人の権利能力権利能力権利を持ち、義務を負うことができる資格のこと。民法3条1項により、人は出生と同時にこれを取得します。用語ページを見る →に枠をはめておる。定款定款法人の目的や名称などの基本的な事項を定めた根本規則。民法34条は、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内で法人が権利を有し義務を負うとしています。用語ページを見る →その他の基本約款で定められた目的の範囲目的の範囲法人が権利を持ち義務を負うことのできる枠のこと。定款その他の基本約款で定められた目的によって画されます(民法34条)。用語ページを見る →内において、権利を有し義務を負う——と。
条文の内容
法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 法人法人生身の人間ではないのに、権利を持ち義務を負うことができる存在。法律の規定によらなければ成立しません(民法33条1項)。用語ページを見る → |
| 枠その一 | 法令の規定に従い |
| 枠その二 | 定款定款法人の目的や名称などの基本的な事項を定めた根本規則。民法34条は、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内で法人が権利を有し義務を負うとしています。用語ページを見る →その他の基本約款で定められた目的の範囲内において |
| 効果 | 権利を有し、義務を負う |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
人間と比べると、ずいぶん窮屈だね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
民法3条1項は「私権の享有は、出生に始まる」とだけ言うておる。範囲の限定は無い。ところが法人は、目的があるからこそ作られた存在じゃ。目的を離れて何でもできるのなら、出資した者も取引の相手も、何を当てにしてよいか分からぬようになる。
| 自然人 | 法人 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 民法3条1項 | 民法34条 |
| 権利能力の始まり | 出生 | 法律の規定による成立(民法33条1項) |
| 範囲の限定 | 条文上なし | 目的の範囲内 |
「目的の範囲」はどこまで広がるか
条文は「目的の範囲内」としか書いていません。定款に書かれた事業そのものに限られるのか、それとも広く読むのか。ここに最高裁の判断があります。
最大判昭和45年6月24日(民集第24巻6号625頁)
会社が政党に政治資金を寄附したことをめぐり、取締役の責任が争われた事件です(いわゆる八幡製鉄事件)。判示事項の第一は「政治資金の寄附と会社の権利能力」で、裁判要旨の第一は次のとおりです。
会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎり、会社の権利能力の範囲に属する行為である。
この判決の参照法条には、民法43条が挙げられています。これは判決当時の条数です。現行の民法では、第三章「法人」のうち第38条から第84条までが削除されており、法人の能力を定めるのは民法34条です。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
政治献金って、定款に「政治献金をします」なんて書いてないよね? それでも範囲内なんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
要旨の言葉をよう見るのじゃ。「客観的、抽象的に観察して」「会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎり」——この二つの限定つきで、権利能力の範囲に属するとしておる。定款の文言を一字一句なぞる読み方ではない、ということじゃな。
同じ判決は、他の論点についても判断を示しています。裁判要旨の第二は、憲法第三章に定める国民の権利および義務の各条項は性質上可能なかぎり内国の法人にも適用されるとしたうえで、会社は公共の福祉公共の福祉社会全体に共通する利益のこと。民法1条1項は、私権もこれに適合しなければならないと定めています。用語ページを見る →に反しないかぎり、政治的行為の自由の一環として政党に対する政治資金の寄附の自由を有する、と述べています。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
この判決が大法廷で出されておるのも、扱った論点の重さを物語っておるのう。ただし、書かれておるのは要旨に現れた範囲までじゃ。そこから先の一般論を足して読んではならぬぞ。
民法33条と34条を続けて読む
| 条文 | 定めていること |
|---|---|
| 民法33条1項 | 法人は、法律の規定によらなければ成立しない |
| 民法33条2項 | 設立・組織・運営及び管理は、この法律その他の法律による |
| 民法34条 | 成立した法人は、法令と目的の範囲という枠の中で権利を有し義務を負う |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
生まれ方に条件があって、生まれた後の動ける範囲にも枠があるんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そういうことじゃ。入口も出口も法律が押さえておるのが法人という存在じゃな。生身の人間には無い縛りじゃが、その代わりに、人間ではないものが権利義務の主体になれておるのじゃよ。
資格別の演習
法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。民法34条がそのとおり定めています。「法令の規定に従い」と「目的の範囲内において」という二つの枠がかかっている点を押さえてください。
判例によれば、会社による政治資金の寄附は、定款に明記されていない以上、常に会社の権利能力の範囲外の行為となる。
解答・解説を見る
解答:×
誤りです。最大判昭和45年6月24日(民集第24巻6号625頁)の裁判要旨は「会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎり、会社の権利能力の範囲に属する行為である」としています。なお同判決の参照法条は判決当時の民法43条で、現行の民法では同条を含む第38条から第84条までが削除されており、法人の能力は民法34条が定めています。
判例によれば、憲法第三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり内国の法人にも適用される。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。最大判昭和45年6月24日(民集第24巻6号625頁)の裁判要旨の第二がそのとおり述べたうえで、会社は公共の福祉公共の福祉社会全体に共通する利益のこと。民法1条1項は、私権もこれに適合しなければならないと定めています。用語ページを見る →に反しないかぎり、政治的行為の自由の一環として政党に対する政治資金の寄附の自由を有する、としています。