刑法第61条・総則
刑法第61条:教唆
人を教唆して犯罪を実行させた者には正犯の刑を科します。2項の「教唆者を教唆した者」まで含めて、条文の射程を確認します。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「やっちゃえ」とけしかけただけの人は、軽く済むんじゃないの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
ところがどっこい。第61条1項は「正犯の刑を科する」と言い切っておる。手を下していなくとも、刑の枠は正犯と同じなのじゃ。
条文の内容
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 1項 | 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する |
| 2項 | 教唆者を教唆した者についても、1項と同様とする |
1項——「実行させた」ことが要る
教唆犯教唆犯人を教唆して犯罪を実行させた者のこと。刑法61条1項により、正犯の刑が科されます。用語ページを見る →が成立するには、条文上、教唆した相手が犯罪を実行したことが必要です。「教唆して犯罪を実行させた者」という書き方が、それを示しています。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
けしかけたけど相手が何もしなかったら?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
条文の文言からは、61条1項の教唆犯にはあたらんことになるのう。「実行させた」の一語を読み飛ばしてはならん。
2項——間接教唆
教唆者を教唆した者も、1項と同様に正犯の刑を科されます。
幇助との対比
| 条文 | 刑 | |
|---|---|---|
| 教唆 | 61条1項 | 正犯の刑を科する |
| 従犯(幇助) | 62条1項・63条 | 正犯の刑を減軽する |
| 従犯を教唆した者 | 62条2項 | 従犯の刑を科する |
なお刑法64条は、拘留または科料のみに処すべき罪の教唆者・従犯は、特別の規定がなければ罰しないとしています。
判例——教唆犯か、共同正犯か
最決平成13年10月25日は、生活費欲しさから強盗を計画した母親が12歳10か月の長男に指示命令して強盗を実行させた事案について、当時その子には是非弁別の能力があり、母親の指示命令はその意思を抑圧するに足りる程度のものではなく、子は自らの意思で実行を決意したうえ臨機応変に対処して強盗を完遂し、奪ってきた金品をすべて母親が領得したなどの事実関係の下では、間接正犯または教唆犯ではなく共同正犯が成立するとしました。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「指示した」だけなら教唆犯かと思ったけど、共同正犯になったんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこよ。指示の強さ、利益の帰属、実行への関与の度合い——それらを見て、間接正犯・共同正犯・教唆犯のどこに落ちるかが決まる。条文の順に丸暗記するだけでは足りんのじゃ。
資格別の演習
人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
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解答:◯
正しい記述です。刑法61条1項の文言そのものです。従犯と異なり、刑の減軽はありません。
教唆者を教唆した者にも、正犯の刑が科される。
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解答:◯
正しい記述です。刑法61条2項が「前項と同様とする」と定めています。
刑事未成年者に指示命令して犯罪を実行させた者は、常に教唆犯となる。
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解答:×
誤りです。最決平成13年10月25日は、指示命令が刑事未成年者の意思を抑圧するに足りる程度のものではなく、自らの意思で実行を決意したなどの事実関係の下で、間接正犯または教唆犯ではなく共同正犯が成立するとしました。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
「教唆して実行させた」。この一句が、教唆犯の入口じゃ。