刑法第60条・総則
刑法第60条:共同正犯
2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯です。自分が手を下していない部分にも責任が及ぶ「一部実行全部責任」の根拠条文を、特殊詐欺の判例とあわせて読みます。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
見張りをしていただけの人も、泥棒したことになるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そこを決めるのが第60条じゃ。「共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」。共同した以上、自分が手を下していない部分についても正犯として責任を負うのじゃよ。
条文の内容
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
共同正犯共同正犯2人以上共同して犯罪を実行した者のこと(刑法60条)。全員が正犯として扱われ、刑の減軽はありません。用語ページを見る →の規定です。「すべて正犯正犯自ら犯罪を実行した者のこと。刑法60条は、2人以上共同して犯罪を実行した者はすべて正犯とすると定めています。用語ページを見る →とする」とあるとおり、関与者の間で刑に差はつきません。
教唆・幇助との違い
刑法第一編第十一章は共犯共犯2人以上が関与して犯罪を実現する形態。刑法は第一編第十一章で、共同正犯(60条)・教唆(61条)・幇助(62条)を定めています。用語ページを見る →の章です。関与のしかたによって、科される刑が次のように分かれます。
| 関与形態 | 条文 | 刑 |
|---|---|---|
| 共同正犯共同正犯2人以上共同して犯罪を実行した者のこと(刑法60条)。全員が正犯として扱われ、刑の減軽はありません。用語ページを見る → | 60条 | 正犯(減軽なし) |
| 教唆犯教唆犯人を教唆して犯罪を実行させた者のこと。刑法61条1項により、正犯の刑が科されます。用語ページを見る → | 61条1項 | 正犯の刑を科する |
| 従犯従犯正犯を幇助した者のこと(刑法62条1項)。刑法63条により、その刑は正犯の刑を減軽したものになります。用語ページを見る →(幇助幇助正犯の実行を助けること。刑法62条1項は、正犯を幇助した者を従犯とすると定めています。用語ページを見る →) | 62条1項・63条 | 正犯の刑を減軽する |
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
教唆犯も「正犯の刑」なんだ。じゃあ共同正犯と同じ?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
科される刑の枠は同じでも、共同正犯は自分が正犯であるのに対し、教唆犯は「正犯の刑を科する」と書かれておるだけじゃ。条文の言い回しの違いに注意するのじゃよ。
判例——特殊詐欺の受領行為と共謀
最判平成30年12月11日は、マンションの空室に宅配便で現金を送付させてだまし取る特殊詐欺において、被告人が指示を受けて空室に赴き、配達される荷物を名宛人になりすまして受け取り、回収役に渡すなどしていること、同様の受領行為を多数回繰り返して報酬等を受け取っており、犯罪行為に加担していると認識していたこと、詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情は見当たらないことなどの事実関係の下では、詐欺の故意に欠けるところはなく、共犯者らとの共謀も認められると判示しました。
判例——道具として利用しつつ共謀もある場合
最決令和2年8月24日は、生命維持のためにインスリンの投与が必要な1型糖尿病にり患した幼年の被害者の治療を両親から依頼された被告人が、自身を信頼して指示に従っている母親に対しインスリンは毒であるなどと執ようかつ強度の働きかけを行い、母親を期待された作為に出ることができない精神状態に陥らせ、被告人の治療法に半信半疑であった父親に対しても母親を介してインスリンの不投与を指示し、両親をしてインスリンを投与させず被害者が死亡したという事実関係の下では、被告人には母親を道具として利用するとともに、不保護の故意のある父親と共謀した未必の殺意に基づく殺人罪が成立するとしました。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
一人は道具、もう一人は共犯者……同じ事件の中で分かれるんだ。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
関与者ごとに、意思が抑圧されていたのか、故意をもって加わったのかを見ていく。第41条のところで見た刑事未成年者の判例と、同じ考え方の筋じゃな。
資格別の演習
2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とされる。
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解答:◯
正しい記述です。刑法60条の文言そのものです。従犯のような刑の減軽はありません。
特殊詐欺において、指示を受けて空室で荷物を受け取る行為を多数回繰り返し報酬を得ていた者について、詐欺の故意と共謀が認められることがある。
解答・解説を見る
解答:◯
正しい記述です。最判平成30年12月11日は、そのような事実関係の下で詐欺の故意に欠けるところはなく、共犯者らとの共謀も認められるとしました。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
第60条は一行しかない。じゃが刑法の中でも、判例がもっとも厚く積み重なった条文のひとつじゃ。