刑法第1条・総則
刑法第1条:国内犯(属地主義)
日本の刑法がどこまで届くのかを決める出発点の条文です。「日本国内で犯した罪」に適用されるという属地主義と、日本船舶・日本航空機の中を国内と同じに扱うルールを確認します。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
刑法っていちばん最初の条文が「殺してはいけません」じゃないんだ!? 「この法律は……適用する」って、なんだか事務的だね。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
ふむ。刑罰は国家がふるう最も強い力じゃからな。まず「どこで起きた事件になら、この法律を使ってよいのか」を決めておく必要があるのじゃよ。第1条はその適用範囲を決める条文なんじゃ。
条文の内容
刑法1条は2つの項からなります。
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 1項 | この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する |
| 2項 | 日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者も、1項と同様とする |
1項が採用しているのが属地主義属地主義犯罪が行われた「場所」を基準に自国の刑法を適用する考え方。刑法1条1項が、日本国内で罪を犯したすべての者に刑法を適用するとしているのがこれにあたります。用語ページを見る →です。犯人が日本人か外国人かを問わず、犯罪地が日本国内であれば日本の刑法が適用されます。この1項・2項が適用される罪をまとめて国内犯国内犯日本国内で犯された罪のこと。刑法1条2項により、日本国外にある日本船舶・日本航空機の中で犯された罪も国内犯と同じ扱いになります。用語ページを見る →と呼びます。
レガちゃんパグ犬 / 見習い駅長
「すべての者」ってことは、日本に旅行に来ている外国人にも刑法が使えるの?
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
そのとおりじゃ。国籍は関係ない。逆に、日本人が国外でした行為には、原則としてこの1項は届かん。そこは第2条以下の国外犯国外犯日本国外で犯された罪のうち、刑法2条から4条の2までが列挙するものに限って日本の刑法が適用されるもの。国外での行為すべてが処罰されるわけではありません。用語ページを見る →の規定が受け持つのじゃよ。
2項が置かれている理由
船や航空機は、航行中は外国の領域や公海の上にあります。1項の「日本国内」だけでは、そこで起きた犯罪に日本の刑法が届かなくなってしまいます。そこで2項は、日本国外にある日本船舶・日本航空機の中を国内と同じに扱いました(旗国主義)。
条文が指しているのは「日本船舶又は日本航空機内」です。外国の船の中や、外国籍の航空機の中は、この規定の対象ではありません。
「日本国内において罪を犯した」とは
条文は犯罪地が国内であることだけを求めており、犯人の国籍・住所・滞在資格を問いません。実行行為と結果が国境をまたいだ場合にどこを犯罪地と見るかは条文自体には書かれておらず、解釈にゆだねられています。
資格別の演習
日本に短期滞在中の外国人が、日本国内で窃盗を行った場合、刑法が適用される。
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解答:◯
正しい記述です。刑法1条1項は「日本国内において罪を犯したすべての者に適用する」と定めており、犯人の国籍を問いません(属地主義属地主義犯罪が行われた「場所」を基準に自国の刑法を適用する考え方。刑法1条1項が、日本国内で罪を犯したすべての者に刑法を適用するとしているのがこれにあたります。用語ページを見る →)。
公海上を航行中の外国船舶内で日本国民が罪を犯した場合、刑法1条2項により刑法が適用される。
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解答:×
誤りです。刑法1条2項が国内と同じに扱うのは「日本国外にある日本船舶又は日本航空機内」です。外国船舶内での行為はこの規定の対象外であり、適用の可否は刑法3条以下の国外犯国外犯日本国外で犯された罪のうち、刑法2条から4条の2までが列挙するものに限って日本の刑法が適用されるもの。国外での行為すべてが処罰されるわけではありません。用語ページを見る →の規定によります。
日本国外の空港に駐機中の日本航空機内で外国人が傷害を犯した場合、刑法1条2項により刑法が適用される。
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解答:◯
正しい記述です。刑法1条2項は、日本国外にある日本航空機内で「罪を犯した者」について1項と同様とすると定めるだけで、犯人の国籍を限定していません。したがって外国人にも適用されます。
ガレ博士フクロウ / 駅長補佐
第1条は「日本の中で起きたことなら、誰であれ日本の刑法で裁く」。ここを土台に、第2条からは「国外で起きたこと」をどこまで拾うかという例外の話になるのじゃ。